「進歩と改革」No.704号   --2010年8月号--

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■主張 鳩山内閣退陣と菅政権の発足について
―奇兵隊内閣は海兵隊にどう立ち向かうのか


狭山事件再審・無罪へ闘う石川一雄・早智子夫妻に聞く

小指の痛みは忘れられ                   福留 久大
―2010年参院選前後

ギリシャ金融危機に直撃されたメルケル政権         柴山健太郎
―ノルトライン・ヴェストファーレン州議選の意味するもの

◆マンガ イイなお前!我々に抗うと、どうなるかだ!    森本 清彦

■国際政治の視点
朝日新聞と外務省                     河辺 一郎

◆作画・文・構成―高根 英博[分裂するイメージ6]
金九〔キム・グ〕テロという救国
呂運亨〔ヨ・ウンヒョン〕統一の意味

鳩山政権と東アジア共同体構想               蜂谷  隆
―「意気込み」と「現実」の落差はなぜ生じたのか

勝海舟とアジア                      曽我 祐次

◆深海峯介の[映画評論]
P・グリーングラス製作・監督「グリーン・ゾーン」

コミュニティ・ユニオンと組織化               呉   学殊 
―札幌地域労組の先駆的な歩み

有機農業再考論(その10)                西村 一雄

●スポーツ時評 監督は常に冷静に、そして冷徹に      中森 稔博

【編集後記】

狭山事件の再審・無罪へ闘う石川一雄、早智子ご夫妻を訪問し、インタビューをお願いしました。当日は、早智子さんに狭山市駅まで出迎えていただき、車で現地事務所に案内いただきましたが、そこに石川一雄さんが待っていて下さいました。石川さんが生まれ育ち、そして仮釈放で32年ぶりに狭山の地に戻ってから住んでいた自宅は95年に火事で焼失しましたが、その跡地に部落解放同盟の尽力によって立てられたのが現地事務所です。
 現地事務所内には、警察が被害者の万年筆が見つかったとした鴨居も、当時のままに復元されています。2回も家宅捜索して見つからなかった万年筆が3回目に見つかったというこの鴨居。万年筆には被害者の指紋も、石川さんの指紋も付いていませんでした。当時、実際に家宅捜索した警察官が何人も、「鴨居に万年筆はなかった」と証言しています。しかし、証言した警察官のなかにはすでに亡くなった方もいらっしゃるとのことで、「時間との勝負ですね」と早智子さん。石川さんの「私はまだまだこれからですからね」との言葉とともに印象的でした。狭山事件については、鎌田慧著『狭山事件の真実』(岩波現代文庫)や『まんが狭山事件』(七つ森書館)なども、ぜひ読んでいただき、石川さんご夫妻の闘いをともにしていただきたいと思います。

先月号の「主張」で、社民党の連立離脱について書き、校了した翌日に突如として鳩山首相の辞任が発表されました。鳩山辞任の背後に米国の圧力あり―今月で100回を迎えた「マンガ・CROSS―EYES」で森本さんが指摘しています。
 この鳩山内閣、代った菅新内閣に比べて、発足当初は改革への期待がありました。一つが東アジア共同体構想で、蜂谷さんに取り上げていただきましたが、鳩山政権総括へむけた重要な提起となっています。勝海舟の日韓中(支)三国連携論は、多く知られていないのではないでしょうか。東アジア共同体に関連して、曽我さんに改めて紹介していただきました。
 柴山さんの論文は、前号のイギリスに続いてドイツです。ノルトライン・ヴェストファーレン州が面白いですよ、と柴山さん。ギリシャ金融危機が欧州の政治を覆っています。呉学殊さんには、5月号で福岡ユニオンを紹介いただきましたが、今回は札幌地域労組です。西村先生からは、口蹄疫問題等を受けての特別版。作物や家畜の問題だけでなく、人間の生き方を考え直す指摘が盛り沢山に詰まっています。
 本誌が読者の元に届くころは、参院選の結果が出ています。福留先生のご指摘のように、果たして、小指の痛みは忘れられるか、られないか。(山内正紀)