「進歩と改革」852号    --2022年12月号--


■主張  岸田首相の「新・原発推進」政策にストップを!

 「GX実行会議」「臨時国会」で原発推進を表明


 岸田内閣への支持低落が著しい。『毎日新聞』と社会調査研究センターの全国世論調査(9月17〜18日)で、岸田内閣の支持率は29%になった。8月の前回調査から7ポイント減である。内閣支持率が30%を切るのは、2021年10月の政権発足以降初めてのことである。旧統一教会と自民党・安倍元首相との歪な関係が問われ、@安倍国葬決定、A内閣改造、B安倍国葬強行、C臨時国会と、段階を追って「岸田内閣アウト!」の声が高まっている。

 岸田首相が、大胆なリーダーシップを示そうと切り札にしているのが原発政策の転換である。8月24日に開催した「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」に岸田首相はオンライン参加し、東日本大震災以降の「原発依存の低減」や「新増設の凍結」方針の転換を検討することを表明した。『日経新聞』(8月25日)を紹介すれば、岸田首相が検討を指示したのは次の4点である。@次世代革新炉の開発・建設、A運転期間の延長など既設原発を最大限活用、B再稼働したことのある10基に加え安全審査通過済みの七基を追加再起動、C年末にあらゆる方策の具体的結論を出すよう検討加速。岸田首相は、もともと原発推進論者で、勝利した自民党総裁選でもそれを公約していたが、首相就任後、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(22年6月)、「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)(22年6月)で、「原子力の最大活用」が盛り込まれ、「原発回帰」への道が敷かれてきた。

 10月3日、臨時国会が召集されたが、岸田首相は所信表明演説でも、「エネルギー危機を踏まえ、原子力発電の問題に正面から取り組む。10数基の原発の再稼働、新たな安全のメカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設などについて、年末に向け、専門家による議論の加速を指示した」と、自らの姿勢を鮮明にした。エネルギー危機については、『社会新報』(10月26日)に、国際環境NGOのFoE Japanの「電力ひっ迫の原因と解決策をさぐるセミナー」が報告されている。指摘されているのは、「電力ひっ迫は、原発停止や火力の不足、太陽光の不安定さなどが原因とされたが、問題は運用にある」「脱炭素の観点で設備機器の更新や断熱といった省エネの取り組みで需要を下げる、あるいは電力の融通を図ったり、大口契約の内容の見直しで需要をシフトする対策が重要だ」ということで、岸田首相の今回の政策は、電力需要問題、ウクライナ戦争などに付け入った火事場泥棒的だと、強く批判されている。

 「次世代革新炉」の欺瞞


 岸田首相が打ち出したのが「次世代革新炉の開発・建設」であった。「新増設」である。革新炉について、『週刊朝日』(10月28日号)の記事がわかりやすいので、少し長いが紹介したい。「革新炉の候補になっているのは、革新軽水炉、小型軽水炉(SMR)、高温ガス炉、高速炉、核融合の五種類だ。有力なのは、最も早い30年代に商業運転を始められるという革新軽水炉だ。WG(註・経産省の原子力小委員会に置かれた革新炉ワーキンググループ)唯一の脱原発派の委員、NPO法人『原子力資料情報室』の松久保事務局長が解説する。『大型の軽水炉が120万kwに対し、SMRは数万〜30万kw程度です。最近出た米国の論文によれば、原子炉の種類によって出力当たりの核のゴミが一般的な原発より2〜30倍も増える可能性があると指摘しています。高温ガス炉は特殊な核燃料を使いますが、大量に生産できる工場は存在しません。また、使用済み核燃料の取り扱いも問題になります』」。

 さらに続けたい。松久保氏の話である。「次世代と言いながら、実は現行世代と同じ原子炉(加圧水型炉)が使われているのです」「私は原子力小委員会で『革新原子炉の革新性とは一体何ですか』と、事務局の担当者に尋ねました。すると、ブルームホールド・タンクといって、事故の時に放射性希ガスが放出しないようためておくタンクを付けると、答えたのです。そうした機能をいくつか付ければ″革新”だというわけです。先進的な技術で安全性が確立された原子炉のように、国民が理解してしまう可能性があります」。紹介した『週刊朝日』(10月28日号)は「岸田政権『原発新増設』への大疑問」とタイトルして、優れた報道になっている。

 「岸田政権の新・原発推進政策に反対する緊急全国署名」スタート


 「既設原発の運転延長」では、原則40年、最長60年としてきたのをさらに延長することが検討される。また来年夏以降の再稼働が表明された7基とは、東京電力柏崎刈羽原発6・7号基、東北電力女川原発2号基、関西電力高浜原発1・2号基、中国電力島根原発2号基、そして日本原子力発電の東海第2原発である。岸田首相は、「原発再稼働に向け、国が前面にたってあらゆる対応をとる」と、自ら地元自治体の同意を得る姿勢を示している。その姿勢は旧統一教会と自民党の癒着解明にこそ求めたい。

 岸田政権の「新・原発推進政策」に反対するため、原水禁日本国民会議などで構成する「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」が緊急署名に立ち上がった。要請事項は次の4点である。

 (1)稼働した10基の原発の即時停止と新たに稼働しようとする原発7基の再稼働を中止すること。

 (2)原発運転期間の現行ルールを変更しないこと。

 (3)原発の新増設及びリプレースを中止すること。

 (4)新型原子炉の開発ではなく福島第1原発も含む原発の廃炉研究をすすめること。

 署名期間は11月25日(金)である。「GX実行会議」での検討は年末までにまとめるとしている。署名期間は短いが、首相官邸、経済産業省、経団連、原子力村の原発推進政策へNO!を突きつけよう。