「進歩と改革」840号    --2021年12月号--


■主張  第49回総選挙を終えて―自民党の単独過半数を許す  
 
 政権交代ならず自公政権の継続へ


 第49回衆議院総選挙は10月19日(火)公示され、31日(日)に投票・開票された。投票率は55・93%で、前回より2ポイント余り上回ったものの、戦後3番目に低い投票率となった。岸田新政権が10月4日に発足して、わずか10日後の14日に衆議院が解散された。首相就任から解散、解散から投票日のいずれも、現行憲法下で最短という異例の選挙であった。新政権への期待、マスコミが新政権への批判を避ける「ご祝儀相場」をあてにしたものであった。

 結果を読売新聞の見出しにみれば「自民 単独過半数 立民 惨敗 議席減 維新躍進第3党」であった。各紙ほぼ共通しているが、立憲民主党への朝日新聞の報道は混迷し、14版では「立憲、共闘に一定の効果」としたが、16版では「立憲後退 共闘生かせず」に変更された。

 自民党は、岸田新首相の下で、「新しい時代を皆さんとともに」「新しい資本主義で分厚い中間層を再構築する」と〈新しさ〉をアピールした。自民党への批判は甘利明幹事長の小選挙区落選(比例復活)など強く存在したが、獲得議席は261(小選挙区189・比例72)であった。公示前276議席(前回284)より減らしたが、単独で過半数233議席を超えたうえ、常任委員会のすべての委員長をだして、過半数の委員を確保できる絶対安定多数(261議席)に達した。この結果の多くは、自民党が菅義偉首相を辞任に追い込んだお陰であろう。市民連合と立憲野党の政策合意のタイトルは「命を守るために政治の転換を」であったが、岸田新首相へのトップのすげかえ、コロナ第5波感染「収束」で、安倍・菅政権とつづく「コロナ失政」「コロナ無策」への批判がかわされてしまった。連立相手の公明党も32議席(小選挙区9・比例23)を得て、前回から3議席増やした。

 今次総選挙結果の特徴は維新の会の躍進である。維新は41議席(小選挙区16・比例25)で、公示前・前回の11議席から躍進した。吉村洋文大阪府知事を前面に押し出したアピールを行い、新型コロナ感染対応など自民党への不満・批判票を獲得し、立民支持層からも票を得た。言うまでもなく維新の会は改憲政党である。自民・維新の2党で301議席。公明・無所属を含め衆議院で3分の2の改憲議席(310)を大きく超えた。これが今次総選挙の示した冷厳な事実である。今回、自民党公約には、弾道ミサイル防衛能力保有(実質、敵基地攻撃能力)、2022年度からGDP比2%以上の防衛力増額が打ち出されている。 総選挙結果を受けて、我われはそれを許さない重大な課題を負うことになった。

 市民と野党の共同前進と立憲民主党・共産党の後退


 立憲民主党の獲得議席は96(小選挙区57・比例39)で、公示前110議席を下回った。今回、市民と立憲野党の政策合意を基礎に、全国の214小選挙区で候補者の一本化が実現した。なかで62小選挙区で野党が勝利したが、立民は比例選挙で伸びずに後退した。告示期間中、BS放送に出演した市民連合世話人の山口二郎法政大学教授は、立民に「140議席から150議席」獲得の期待と予想を述べていたが、遠く及ばなかった。共産党も10議席(小選挙区1・比例9)で、公示前12議席を下回った。しんぶん赤旗(11月2日)の常任幹事会声明では、「野党共闘で政権交代を始めよう」という訴えは「最初のチャレンジとして大きな歴史的意義があったと確信する」が、「同時に、野党共闘は、今後の課題も残した。とくに、野党が力をあわせて、共通政策、政権協力の合意という共闘の大義、共闘によって生まれる新しい政治の魅力を、さ まざまな攻撃を打ち破って広い国民に伝えきる点で、十分とは言えなかったと考える」と述べている。今後にそれぞれの総括が深まろう。

 立民の枝野幸男代表は、総選挙敗北の責任をとって辞意を表明した。代表選が始まるが、心配されるのは、今回11議席へ議席を増やした国民民主党(小選挙区6・比例5、告示前8議席)と連合右派単産の誘導・圧力によって保守政党化、保守2大政党化への道が公然と拓かれることである。小選挙区制の弊害は大きいが、現行が小選挙区制である限り、市民と共産党を含む立憲野党の共同が実現されなくてはならないのは自明なことではないか。なお、れいわ新選組は健闘し、公示前1議席を3議席(比例3)に伸ばした。

 社民、公認1名(沖縄2区)、推薦1名(新潟5区)当選、比例全国101万票獲得の意義


 社民党は、公認・推薦含め最低4議席の当選をめざして闘ったが、目標を達成することは出来なかった。しかし、沖縄2区で新垣クニオ氏が勝利して「沖縄の社民党」の旗を守り、また新潟5区で社民党推薦の米山隆一氏が勝利した意義はことのほか大きい。米山氏は無所属だが、今後に社民党との力強い協力関係が築かれよう。社民党の前回議席は、沖縄2区と比例九州ブロック1議席の計2議席であった。しかし今回、比例九州ブロックでの社民党議席は獲得できなかった。前回復活当選した党幹部が離党し立民に合流、党組織が傷つき弱まるなかでの闘いとなり、前回から5万6千票減の22万1221票(3・5%)となったが健闘した。当選まで約4万票足りなかった。党宮城・山形県連合が解散した東北ブロックも頑張り、全国では101万余りの比例票を頂いた。2017年の衆院選の比例票は94万、2019年参院選の比例票は104万であった。 党分裂を経た危機のなかで、これほどの比例票を頂いた。社民党全国連合は、「新生社民党の底力を発揮し、来年の参院選への大きな足掛かりを築くことができた」と声明したが、本誌もそう思う。もちろん勝利したわけではないし、社民党の力は圧倒的に小さい。来夏の参院選を闘う社民党の存立基盤を防衛したということである。参院選へは、今後に佐高信氏らが提唱する「共同テーブル」の取り組みもすすんでこよう。参院選でのジャ ンプへ、今次総選挙での取り組みをステップとしたい。(11月3日)