87号    --2021年4月号--

■主張  東日本大震災、福島第1原発事故から10年に

 震災からの「創造的復興」は


 東日本大震災、その後の東電福島第1原発事故から10年が経過する。2011年3月11日、マグニチュード9・0を記録する東北地方太平洋沖地震が発生し、激烈な津波による家屋倒壊流失・火災が襲った。地震50分後に、津波は福島第1原発を襲い、1号炉・2号炉・4号炉・3号炉が全電源を喪失し、1〜3号炉で炉心溶融き、1・3・4号炉で水素爆発が発生した。あの悲惨から10年である。東日本大震災による死者は1万5899人、行方不明者は2527人を数える(警視庁、2020年12月10 日現在)。今なお行方不明者を捜索する家族、ボランティアの姿を新聞報道で知った。今年2 月13日には東北地方を震度六強の地震が襲った。東日本大震災の余震だという。犠牲者への追悼、家族・被災者の悲嘆、ボランティアの連帯、そして復興への希望などさまざまに紡がれてきた10年であったろうと思う。

 復興の10年が問われている。当時の民主党政権は「東日本大震災復興基本法」を成立させ、「21世紀半ばにおける日本のあるべき姿を目指した復興を行う」、つまり「創造的復興」を打ち出した。それを検証する岩波ブックレット『震災復興10年の総点検』(五十嵐敬喜、加藤裕則、渡辺勝道著)が次のように書いている。

 「公共事業と個別事業の現実を概括的に言えば次のようになろう。安全・安心について物理的には相当程度確保された。防潮堤、空地、高台移転といったいわゆる『多重防御』はほぼ達成されている。暮らしの再建には、住む場所と仕事の確保が決定的に重要である。住宅は…総じて数の上での不足は解消された。仕事の面では…農業、漁業、商店などの分野での高齢化が問題となっている。…しかしこれらは全国一般の状況とも重なっていて、必ずしも復興の失敗というわけではないだろう。生活していくうえで不可欠な学校・病院・福祉施設などはほぼ確保されいて、買い物、交通なども…機能的・便宜的な視点でいえば相当程度確保されている。しかし、区画整理地には依然として人が住まない。高台移転は数戸の住宅しかないというケースも多く、将来の持続可能性が危ぶまれる」「確かに物理的に復興は完成した。だが注意深く見ると、震災前に人々が有していた『つながり』(コミュニティ)がその努力にもかかわらず希薄化していることは、強調しておかねばならないだろう」。

 また別に、「莫大な復興予算も、道路や産業団地などの『ハコモノ』に流れ、個々人の生活の回復のためにどの程度使われたのか」と疑い、「人間の復興」の内実を問う声も強い。今後においても「人間の復興」「住民主役」こそが、常に問われなくてはならないことである。

 めぐってくる「10年目の3・11」


 東日本大震災10年は福島第1原発事故からの10年である。福島県では「帰還」政策が進められているが、いまも約3万6000人が県内外で避難生活を送っている状況にある。福島第1原発の廃炉作業のメドは立っていないのみか、炉内に残る溶けた核燃料(デブリ)を冷やして出た汚染処理水が124万トンを超え、海への放出を政府が決めようとして、漁民・地元県民から強い批判が起きている。

 事故当時の東電役員3人の刑事責任を問う福島原発告訴団長の武藤類子さんが『10年後の福島からあなたへ』(大月書店刊)で述べている。「また春はめぐってくる。10年目の3・11がめぐってくる。原発事故を経験したそれぞれにとって、それはどんな10年だったろうか。…10年を経て、失ったものへの懐かしさに胸がえぐられる。時とともに深く、激しく」。

 その武藤さんは提言する。「地球を構成する一員として、これからその存続を担う子どもたちの命と健やかさ、賢明さを守ること。原発事故の責任と真実を明らかにして、その教訓をしっかりと伝承すること。原発の収束・廃炉作業を、前の時代を反省し、新しい時代を迎えるための壮大な価値ある後始末だと位置づけ、安全を確保し時間をかけた作業にすること。すべての被害者が生活を取り戻し、幸せに生きられるサポートを考えること。省エネで暮らしのありかた、エネルギー政策のありかたを問うこと。これ以上の環境破壊をしないこと。それらの議論に国民が、とくに若者が参加できること」。

 このなかにある原発廃炉作業は過酷である。武藤さんの本で知ったが、「原発作業員の事故は頻発し、『発災から2019年上半期までに、東電が公表・認めているだけで死者20人・重症24人・意識不明等29人・負傷222人・熱中症101人(2019年12月1日、春橋哲史氏ブログより)」。武藤さんの提言に、私たちも連なり取り組みたい。

 福島原発事故の責任を誰がとるのか


 福島第1原発事故から10年経ついま、脱原発にむけて問われるのはやはり東京電力の責任である。東電刑事裁判は、東京地裁で「全員無罪」と不当に判決された(2019年9月19日)が、指定弁護士は「正義に反する」と東京高裁に控訴した。被害者代理人の海渡雄一弁護士は『東電刑事裁判 福島原発事故の責任を誰が取るのか』(彩流社刊)で次のように言う。「高裁審理のポイントはいくつかありますが、とりわけ裁判所による現場検証を認めさせる必要があります」「最も重要なのは高裁の第1回公判です。この日に高裁で新たな証拠調べをきちんとやるかどうかが決まります。…その時までに世論を盛り上げ、多くの市民の皆さんに裁判所前に集まってもらうよう取り組んでいきたいと思っています」。高裁にむけた闘いは昨年、コロナ禍で大きく制約された。第1回公判期日も現在不明だが、今年である。東電元役員の責任を問い、原発のない社会を! 原発事故10年の春に決意するのは、そのことである。(3月1日)