「進歩と改革」No.814号    --2019年10月号--


■主張 2019年夏の原水禁運動に思う
 
 原発も核も戦争もない社会を―福島第2原発の廃炉決定
 

 参院選を終えた2019年夏に、原水禁大会が相次いで開催された。今年は被爆74周年であった。2011年3月の福島第原発事故を7月24日、福島第2原発全4基の廃炉を福島県知事に対して正式に表明した。大会で、地元あいさつに立った角田政志・福島県平和フォーラム代表が、「原発のない福島を訴えてきた我われの運動にとって大きな一歩だが、廃炉までは長い年月がかかる。これからも監視する必要がある」「東電と国の責任を問い、福島の悲劇を繰り返さないためにしっかり取り組む」と発言した。

 この間に福島現地で取り組まれてきた「原発のない福島を!県民集会」では、「東電福島第2原発を廃炉とし、福島県では原子力発電は将来にわたって行わず、福島県を再生可能エネルギーの研究・開発及び自立的な実施拠点とすること」が毎年訴えられ要求されてきたが、廃炉が実現するのだ。しかし、福島第2原発4基の廃炉には40年以上かかるとされる。ここまで廃炉決定が遅れたことについては、原子力資料情報室のプレスリリース(報道発表)で、1万67体の使用済核燃料の搬出先がないことがあり、そこから廃止とともに一時保管施設と称する乾式貯蔵施設の設置が県に申し入れられたとある。また、事故炉でないとはいえ、廃止措置により発生する大量の放射性廃棄物(「放射性廃棄物でない」と強弁するものも含む)の後始末もきわめてやっかいであることが上げられている。福島第1原発が抱える極めて重い課題に、第2原発の廃止という難題が加わるのだが、その作業は長い過程にあり、監視が求められ、問われている。そうしたなかで、安倍政権は原発再稼働路線を進み、東京電力は柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働をめざしている。福島第2原発の廃炉決定のあとにつづくのは柏崎刈羽原発の再稼働中止、そして廃炉決定でなくてはならない。原発のない社会をめざす上で、東京電力の社会的責任を追及し続けることが強く求められている。  

 核兵器廃止条約採択から2年―中距離核戦力全廃条約執行、2020年NPT再検討会議を前に


 被曝74周年原水禁広島大会・広島は、8月4日から6日まで3日間の日程で開催された。世界大会・長崎は同7日から9日にあった。今年の原水禁大会は、次のような情勢の下で行われた。

 @2017年7月に国連で採択された「核兵器禁止条約」から約2年が経過した。この条約は50カ国目の批准後90日で発効するが、8月8日の時点でいまだに署名40か国、批准25か国の現状にあり、核兵器保有国を始め核抑止力への依存政策をとる国は同条約に背を向けている。米国との同盟深化をめざす安倍政権も同様で、我われは世論を高めて日本の核兵器禁止条約への署名・批准を迫っていかねばならない。

 A米国トランプ政権は「核態勢見直し」で低威力核弾頭など新型核の製造を開始、イラン核合意から脱退し、米ロ間に締結されていた中距離核戦力(INF)全廃条約を中国への対抗も意図して離脱を表明して、これは8月2日に失効した。一方、ロシアは米国のミサイル防衛態勢を打破すべく核・ミサイルなどの開発をすすめ、新たな米ロ核軍拡競争が再燃しつつある。INF全廃条約失効は許されない。

 Bそうしたなか、来年2020年4月に核不拡散条約(NPT)再検討会議が開催される。一九七〇年にNPTが発効して半世紀が立ち、核兵器禁止条約が採択されてからは初めての重要な会議となる。2000年のNPT再検討会議は「核兵器国は保有核兵器の完全廃棄を達成するという明確な約束を行う」という文書を含む合意が生み出された。その背景にあったのが、オバマ大統領のプラハ演説(核のない世界へ)であった。トランプ政権の下、今そうした気運は失われており、「来年のNPT再検討会議も成果が期待できない」(川野浩一原水禁国民会議議長)状況にある。我われは、トランプ政権の「力による平和」という軍事戦略を国際世論をもって批判、孤立させねばならない。世界大会・福島で、主催者あいさつに立った則松佳子・大会副実行委員長(原水禁国民会議副議長)は、「来年のNPT再検討会議に向けて1000万署名の推進なども討議を重ねよう」とした。NPT再検討会議への関心を高めたい。核も戦争もない社会へ! 被爆の実相を通じて「核絶対否定」の理念を深めたい。