「進歩と改革」No.812号    --2019年8月号--


■主張 参院選で安倍改憲阻止を! 社民党の前進を!
 
 参院選は7月4日公示・21日投票へ
 

 1月28日に召集された第198通常国会が6月26日に閉会した。当初、安倍首相は「風はきまぐれで誰かがコントロールできるようなものではない」などと解散権をもてあそんでいたが、結局は会期延長・衆議院解散(衆参同日選挙)を行わず、政府は同日の臨時閣議で参院選日程を「7月4日公示、21日投票」と決定した。この判断の背景には、同日選挙による衆議院改憲3分の2議席切れの危険性を回避すること、世論調査で好調な安倍内閣支持率をもってすれば、参院選単独でも勝利できると判断したと報じられている。しかし、衆議院で改憲派3分の2議席を維持しても、参議院で阻止できれば安倍改憲の道は閉ざされ、安倍政治の命脈は尽きるのだ。いま闘いの真っ最中だが、我われにとっては大きなチャンスである。  

 自民党の参院選公約・外交にみる強硬姿勢
 

 今次参院選にのぞむ自民党の公約は、外交・防衛や経済、憲法改正など6つのテーマを柱とし、特に「外交」を第1の柱と位置付けている。その外交、安全保障を読むと、以下のようにある。

 【外交】日米同盟をより強固にし、揺るぎない防衛力を整備する。北朝鮮に対し制裁の厳格実施とさらなる制裁の検討など圧力を最大限に高め、核・ミサイル開発の完全な放棄を迫る。拉致被害者全員の即時一括帰国を目指す。日本の名誉と国益を守るための戦略的対外発信を強化するなど、韓国、中国などの近隣諸国との課題に適切に対処する。我が国固有の領土である北方領土問題の解決に向け、平和条約締結交渉を加速する。

 【安全保障】中国の急激な軍拡や海洋進出など、北朝鮮の核・ミサイル開発などに対し、領土・領海・領空を断固守る。日米同盟や友好国との協力を不断に強化し、抑止力の向上を図る。沖縄の基地負担軽減のため、米軍普天間基地の移設や在日米軍再編を着実に進める。

 露骨なまでの強硬姿勢である。安倍首相は、北朝鮮問題では、金正恩国務委員長との日朝首脳会談について、拉致被害者家族の声に押されて「前提条件なし」での実施を表明してきた。北方領土問題で成果を挙げたい安倍首相は、「4島返還」から姿勢を変え、「2島返還」での平和条約締結へ「北方領土は固有の領土」との表現を封印、4月に公表した外交青書でも「日本に帰属」との記述を見送った。しかし、自民党公約は「北朝鮮に対し制裁の厳格実施とさらなる制裁の検討など圧力を最大限に高め」とし、また「我が国固有の領土である北方領土問題」と、安倍首相以上に強硬である。この姿勢では日朝首脳会談、日ロ領土交渉も進展しないことは明らかであろう。6月21日の朝日新聞『朝日川柳』に「四島や拉致やイランのあと聞かず」との歌が選ばれていたが、まさに泥舟の安倍外交をさらに破綻に引き込むものだ。

 そして、中国(北朝鮮)への包囲・圧力のため、「日米同盟・揺るぎない防衛力整備」路線がうたわれる。その下で、イージスア・ショア配備強行、ステルス戦闘機F35の爆買い、沖縄・辺野古埋め立て強行の軍拡が目指されるとともに、原発推進、農業破壊、憲法改正が主張されている。公約の六項目目に立てられた憲法改正では、「憲法改正原案の国会提案・発議をし、国民投票を実施し、早期の憲法改正を目指す」と明記された。そこへのチャッチ・コピーが「令和新時代・伝統とチャレンジ」である。軍事大国化の道をきっばりと閉ざそう。  

 立憲野党の1人区候補一本化と市民連合との「共通政策」
 

 立憲野党では、統一自治体選での「敗北」を受けて、その後に1人区での候補一本化作業が進展した。6月13日に開催された立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党、衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」の五野党・会派の幹事長・書記局長会談で、全国32の参院1人区全てで候補の一本化が完了したことが確認された。社民党が名乗りを上げてきた鹿児島選挙区では、@国民が推す候補を無所属とする、A地元の融和を進める、B衆院鹿児島四区では社民の意向を尊重する(社民党・吉川はじめ幹事長談、6月8日『東京新聞』)ことで決着した。残念ではあるが、全国で候補一本化から進んで野党共闘の実際が強められてきた。 5月29日には、五野党・会派と市民連合との13項目にわたる「共通政策」が合意され、署名された。その一部を紹介すると、以下の通りである。

 ※だれもが自分らしく暮らせる明日へ

 1、安倍政権が進めようとしている憲法「改定」とりわけ改憲発議そのものをさせないために全力を尽くすこと。

 2、安保法制、共謀罪など安倍政権が成立させた立憲主義に反する諸法案を廃止すること。

 3、膨張する防衛予算、防衛設備について憲法9条の理念に照らして精査し、国民生活の安定という観点から 他の政策の財源に振り向けること。

 4、沖縄県名護市辺野古における新基地建設を直ちに中止し、環境の回復を行うこと。さらに、普天間基地の早期返還を実現し、撤去を進めること。日米地位協定を改定し、沖縄県民の人権を守ること。また、国の補助 金を使った沖縄県下の自治体に対する操作、分断を止めること。

 5、東アジアにおける平和の創出と非核化の推進のために努力し、日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との国交正常化、拉致問題解決、核・ミサイル開発阻止に向けた対話を再開すること。

 6、福島第1原発事故の検証や、実効性のある避難計画の策定、地元合意などのないままの原発再稼働を認め ず、再生可能エネルギーを中心とした新しいエネルギー政策の確立と地域社会再生により、原発ゼロ実現を目指すこと。

7、 毎月勤労統計調査の虚偽など、行政における情報の操作、捏造の全体像を究明するとともに、高度プロフェッショナル制度など虚偽のデータに基づいて作られた法律を廃止すること。

 8、2019年10月に予定されている消費税率引き上げを中止し、所得、資産、法人の各分野における総合 的な税制の公平化を図ること。(以下、略)

 ここでの消費税政策は、立憲野党内に、野田佳彦元首相率いる「社会保障を立て直す国民会議」が存在することからも心配されたが、その合意内容(消費税率引き上げを中止し、所得資産、法人の各分野における総合的な税制の公平化を図る)は我われにとっても同感でき、歓迎できるものである。

自民党公約では、消費税率を今年10月に10%に引き上げることがうたわれた。「人生100年時代」は、自民党のチャッチ・コピーだが、人生100年時代の安心が逆進性の強い消費増税で築けるのがどうかが問われている。金融庁審議会の報告書の「老後2000万円問題」は、「(投資で老後の生活を賄えと)自己責任を言う政府は責任放棄の政府と言わざるを得ない」「憲法25条を真っ向から否定するもの」(社民党・吉川幹事長)だ。消費税増税とともに安倍政権批判の声を強めよう。  

 「1人区決戦」での立憲野党の勝利を
 

 安倍一強・忖度政治の打破、安倍軍拡・改憲路線の転換を果たしたい。与野党逆転が望まれるが、まずは改憲派三分の二議席の阻止である。参議院総定数の3分の2は164議席である。非改選の改憲派勢力は自公と維新、無所属を加えて七八名で、今回の参院選で三分の二を超すため必要なのは86議席である。自公と維新の改選議席は85議席だから、改憲派3分の2を打破することは可能である。そのためには、6年前選挙で2勝29敗であった1人区での立憲野党の勝利が必要である。前回16年選挙では、候補を統一した立憲野党の11勝21敗であった。自民党も1人区決戦を承知で、東北を中心に臨んでいる。前回選挙で躍進した東北、そして甲信越地区では、安倍首相が懇願し、トランプ大統領が「7月の参院選後に待つ」とした日米FTA(自由貿易交渉)での農産物輸入自由化とこめ政策の解体的危機とともに、防衛省のデタラメが暴露された地上配備迎撃システム「イージス・アショア」配備問題が政策的に焦点化されるであろう。立憲野党の奮闘が期待される。

 社民党にとっても、今次参院選は政党要件をかけた決定的な闘いとなっている。国会議員五名か比例得票率二%を確保できなければ2022年以降に政党要件を失う可能性があるためだ。そのため、社民党は「得票率2%以上を至上命題として、3議席以上の獲得」を目指している。社民党は、17年総選挙の比例得票で2%を切ってしまった。旧民進党分裂の中で、「野党をなくすな」との声が立憲民主党へ集中した結果だが、同時に社民党は16年参院選比例で2・74%、13年選挙比例で2・36%の得票率を得ている。社民党は参院選で独自の存在感を示したい。自治体議員を中軸とした社民党票の固め、地域的な広報活動の拡大における社民党の「見える化」、そして労組(OBG)対策を強め、比例候補の大いなる魅力をアピールして行きたい。残された期間に頑張ろう。