「進歩と改革」No.806号    --2019年2月号--


■主張 沖縄新基地・改憲の阻止へ参院選勝利を!

 昨年10月24日に招集された第197臨時国会は、12月10日に閉会した。臨時国会では、入管法改正案が強行成立した他に、水道運営の民営化をめざす水道法改悪案や沿岸漁業への大企業参入を拡大する漁業法改悪案など、政府が新規に提出した13の法案の全てが成立した。全法案成立は2007年の臨時国会以来、約11年ぶりであり、国会審議の空洞化を伴いつつ与党の圧倒的な優位、力を示した国会ではあった。憲法改悪をめざす安倍政権の下で、成長戦略・新自由主義改革の急速な展開が図られた国会でもあった。その政治の転換を新年に果たしたい。

 外国人技能実習生へ共感を示さない安倍首相の冷たさ


 臨時国会で最大の与野党対決法案となった入管法改正案は、外国人労働者の受け入れを拡大するものである。この法案の参院審議において、安倍首相は外国人技能実習生が3年間で69人も死亡していたことについて問われ、「見ていないから答えようがない」と答えた。外国人労働者、その技術研修実習生については、『外国人研修生殺人事件』(安田浩一著、七つ森書館、2007年2月刊)で、彼・彼女らが置かれた悲惨な環境とそれを導く日本の荒廃と病理が描かれていた。時代は推移し、制度の変更もあったが、外国人技能実習生には低賃金、賃金未払い、長時間労働、パワハラなど人権侵害が多発している。失踪者は2017年で7089人に及び、5年前の3・5倍になっている。そうした現状を放置して、「見ていないから答えようがない」と言い放つ安倍首相の冷たい人間性は許しがたい。アベ政治を許さない! それは改憲だけではない。

 沖縄・辺野古の埋め立て土砂投入の歴史的暴挙


 12月14日、安倍政権は、沖縄・辺野古新基地建設にむけ埋め立て土砂の投入を強行した。投入されたのは辺野古崎南側の一角で、2015年10月に始まった辺野古「本体工事」は重大な局面に入った。

 辺野古埋め立て土砂投入は、幾重にも暴挙である。まず第1に、沖縄県民は昨年九月三〇日の県知事選での玉城デニー氏の勝利を通じて、辺野古新基地建設反対の意思を明確に示してきた。第2は、県知事選の1カ月前、沖縄県は辺野古埋め立て承認を撤回したが、防衛省は違法な行政不服審査請求と執行停止申し立てを行い、同じ政府内の国交相がこれを承認し、効力の一時停止を発表した。今回の土砂投入は、この違法、八百長の手続きを根拠にして行われたものであり、断じて認められるものではない。第3に、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票(2月)を待たずして、土砂投入を強行したことである。

 これは安倍政権による地方自治・民意・自然の破壊である。『琉球新報』社説(12月15五日)は、「第4の琉球処分」と批判した。「マヨネーズなみの地盤」(北上田毅氏)の上に軍事基地を作ろうとする安倍政権への批判を高めよう。  

 動かぬ憲法審査会―「改憲原案を直接国会に提出せよ」と改憲派学者が提言


 安倍政権は、臨時国会で憲法審査会への自民党案提示をめざしたが、それは出来なかった。憲法審査会そのものが実質、可動しなかった。それ故にか、自民党機関紙『自由新報』1月1日号は、改憲派憲法学者の百地章・国学院大学特任教授を登場させ、次のように訴えさせている。「国会の憲法審査会を動かすためには、改憲世論の盛り上がりが必要である。国会議員の皆さんには、憲法審査会が動かなければ、国会法(第68条の2)に従い、衆議院議員100人以上、参議院議員50人以上の賛成で『憲法改正原案』を国会に提出する方法があることを念頭に、一層奮起して頂きたいと心から念願している」。自民党の衆院議員は283人、参院議員は126人であるから、それは可能であろうが、憲法審査会とその審議を無視せよとの暴論である。しかし、警戒を怠ってはならない。

 安倍首相は臨時国会後の記者会見で、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと言ったが、今もその気持ちに変わりない」と発言した。今夏参院選後に改憲発議をして、2020年始めの国民投票で賛成を得れば、同年中の改正新憲法施行に間に合うとされる。それだけに参院選が決定的に重要になってくる。参院選に勝利し、改憲と辺野古新基地建設を阻止するために、立憲野党と市民の共同を強く求め続け実現することは、新年における我われの課題である。日本の政治を変え、「アジアの世紀」に連なり、アジア民衆の共生へ歩をすすめよう。