「進歩と改革」No.803号    --2018年11月号--


■主張 新基地反対! 安倍3選を痛撃した沖縄県知事選

 玉城デニー氏が圧勝、過去最多の30万票を獲得


 沖縄県知事選は、9月13日に告示、同30日に投開票された。結果は、翁長後継で辺野古新基地建設反対を公約する玉城デニー前参院議員が、辺野古新基地推進の安倍政権が応援し、自民党、公明党、維新の会、希望の党が推薦する佐喜真淳前宜野湾市長との事実上の一騎打ちを制して、当選した。心から喜び合いたい。今年2月の名護市長選、9月の名護市議選の結果を見ても拮抗した闘いが予想されたが、玉城氏の得票は39万6632票、佐喜真氏は31万6458票で、玉城氏が約8万票差をつけた圧勝であった。玉城氏の獲得票は県知事選史上、最多である。台風24号の襲来で心配された投票率は63・24%であったが、期日前投票が前回の2倍の35・1%で、佐喜真陣営では「実績調査票」で期日前投票の報告が求められたという(10月2日『東京新聞』)。

 「翁長知事が命を削って全うしようとしたことが県民にしっかり宿っていた」と玉城氏
 

 勝利した玉城氏は、「翁長雄志知事が命を削って全うしようとしたことが県民にしっかり宿っていた」と述べた。その通りだと思う。22日に開催された玉城デニーうまんちゅ(みんなで)大集会で、故翁長知事の樹子夫人が、選挙告示後初めて姿を見せて訴えた。「今回は静かに見ていよう。県民が出す結論を待とうと思っていたが、日本政府のやり方があまりにひどい。政府の権力をすべて行使して、私たち県民を愚弄するように押し潰そうとする。民意を押し潰そうとする」「こんな風に(選挙戦に)出てくることには躊躇がありました。でも翁長が『しょうがないな。みんなで頑張らないといけないから君も頑張って』と言ってくれているようでここに立っています」「県民の心に1ミリも寄り添おうとしない相手の方に悪いけど、私は譲りたくありません。ウチの人の心をデニーさんが継いでくれるのかと思ったら涙が止まりませんでした。残り1週間、マグマを噴出させてでも必ず勝利を勝ち取りましょう」。

 新基地建設NO! へ沖縄県民の民意は示された


 こうした訴えが支援者の心をとらえ、沖縄県民の間に感動と共感を広げ、翁長知事の遺志を継いだ玉城氏がオール沖縄の精神を体現して闘い、勝利を導いた。玉城氏の勝利である。沖縄県知事選の最大の争点は辺野古新基地建設の是非にあった。佐喜真陣営では、菅義偉官房長官が3回も沖縄入りし、自民党の二階俊博幹事長、小泉進次郎筆頭副幹事長らも沖縄に入ってテコ入れした。前回は自主投票であった公明党は変心して今回佐喜真氏を推薦し、党幹部や国会議員、自治体議員を沖縄に動員した。新潟県知事選で公明党・創価学会が現地に動員したのは500人とされるが、今回は数千人規模と言われている。まさに政権・与党の権力・金力・圧力・総力を挙げた闘いが展開されたが、それにも関わらず、沖縄県民は自主・自立の精神を大切に、「争点隠し」「組織選挙」に負けず、辺野古へ新基地を建設しようとする安倍政権への反対意思をはっきりと示した。沖縄県民の偉大な勝利であり、心からの敬意を表したい。全国からの支援にも拍手を送りたい。

 自民党総裁に3選した安倍首相の針路を塞ごう


 9月7日告示、20日投票で行われた自民党総裁選は、安倍晋三総裁と石破茂元幹事長との間で争われた。今回の自民党総裁選のポイントは2つであった。1つは岸田氏の立候補辞退。これは、自民党内リベラル派の衰弱を表していた。今1つは、竹下派参議院の石破支持で、これは青木幹雄・元自民党参議院議員会長の意向によるとされるが、来年参院選を見据え、自民党の多様性を示すためのものとも言われている。結果は安倍3選。国会議員票は当初予想通りに安倍氏が81・8%を獲る圧勝であったが、地方票は55・3%にとどまった。自民党総裁選で示されたのは、国会では安倍1強でも、地方に存在する安倍批判の声である。続いたのが沖縄県知事選であった。沖縄県民の民意が、安倍首相が外交の基本とする日米同盟路線を痛撃した。安倍首相は、3選後の記者会見で、「70年以上一度も実現しなかった憲法改正にいよいよ挑戦する」と表明した。安倍批判の声を集め広げ、安倍改憲への道を塞ぎたい。沖縄県民の選択に励まされ、私たちの闘いを強めるときである。