「進歩と改革」No.802号    --2018年10月号--


■主張 辺野古埋め立て阻止、沖縄県知事選勝利を!

 翁長氏の逝去にともない9月13日告示・30日投開票で沖縄県知事選


 翁長雄志沖縄県知事が8月8日に亡くなられた。心から哀悼の意を表したい。翁長知事の逝去で、当初11月に予定されていた県知事選が前倒しされ、9月13日告示、同30日投開票で行われることになった。名護、沖縄、宜野湾、南城、石垣の五市議選は8月2日に告示(9日投票)された。

 翁長知事は、2014年の県知事選に一部自民党議員と、社民党、共産党、沖縄社会大衆党など県政野党4会派の要請を受け、自民党を離党し出馬して当選した。「オール沖縄」の原点である。その後、沖縄の歴史とアイデンティティに根ざして辺野古米軍新基地建設阻止、子どもの貧困対策を県政の柱に取り組んできた。翁長知事は7月27日の記者会見で、新基地建設に関する仲井眞前知事の埋め立て承認を「撤回」する手続きに入ると表明していた。政府・防衛省が、8月17日にも強行する埋め立て予定地へ土砂投入を前に、それを阻止するための決断であった。沖縄県は、2015年にも埋め立て承認を「取り消し」た。しかし国が承認取り消しの撤回を求めて代執行訴訟を起こし、いったんは和解したが、16年12月、別の裁判で最高裁は沖縄県の承認取り消しを違法とする不当な判決を出し、その後に埋め立て工事は強行されてきた。その経過をうけた今回の「撤回」である。「取り消し」は、従来の許認可に法的な瑕疵があった場合に将来の効力の消滅を求める行為で、「撤回」は、当初から瑕疵があったかどうかは関係なく、事後に生じた事情により効力を消滅させる行為である。翁長知事は「撤回」の理由として、埋め立て海域に軟弱地盤や活断層の存在など承認時に明らかにされていなかった事実が判明したことなどを挙げた。

 翁長知事はこの記者会見で、「朝鮮半島の非核化と緊張緩和にむけた米朝の努力が続けられている中、20年以上も前に決定された辺野古新基地建設を見直すこともなく強引に推し進めようとする政府の姿勢は到底容認できるものではない」と発言している。これほど新基地建設の不当性・不合理性を示す見事な言葉はない。沖縄県は8月30日、翁長知事の思いを受けて、辺野古米軍新基地の埋め立て承認を撤回した。断固、支持したい。

 「翁長知事の遺志を受け継ぎ、辺野古新基地建設阻止を貫徹する」と玉城デニー氏が出馬


 翁長知事の遺志を受け継ぎ、県知事選に立候補するのは玉城デニー氏である。8月29日、「オール沖縄」の候補として立候補することを正式に表明した。辺野古新基地建設の是非が最大の争点である。この場で玉城氏は自らを、「翁長知事の遺志を受け継ぎ、辺野古新基地建設を阻止する立場だ」とした。その玉城氏の出馬記者会見での発言を紹介しておきたい。

 「次の知事は、その任期中に復帰50年を迎えることになります。新しい沖縄の姿をどうやって県知事選挙で県民の皆さんにしっかり示していけるのか。従来の、東京とのパイプを強調した時代から、沖縄の存在感と可能性は今や格段に上がっています。アジアをはじめ世界に開かれた沖縄へと力強く羽ばたいています。……遠い目標と思われた観光客数はもう1千万人を目の前にしています。国税への沖縄の貢献は、3000億円を超えています。また、子供の貧困対策は翁長県政が柱として肝いりで進めた政策でした。……『県民の生活が第1』、この言葉は、私の政治活動における最も大事な理念であり、『イデオロギーよりアイデンティティ』の言葉は、翁長知事から受け継いだ大切な理念です。私は、子どもや女性、若い人たちにうんと力を注いでいきたいと思います。人材育成にも力を入れたい。沖縄で育まれた文化を、芸能を、世界へ向けてもっともっと発信したい。地元の企業を大切にし、働く皆さんの笑顔を増やし、ユイマール(相互扶助)のチムグクル(精神)で自立と共生の沖縄を目指してまいります」。復帰50年を迎えようとする沖縄の新時代が構想されており、共感できる。沖縄の未来に必要なことは平和、民主主義、人権、自治であり、米軍基地ではない。

 自民党は佐喜真淳宜野湾市長を擁立した。公明党、維新の会が推薦する。今年2月の名護市長選、6月の新潟県知事選で自民党候補が勝利した際に展開された「争点隠し」「企業選挙」「ステルス戦」が想定されようが、必ず跳ね返していきたいものだ。自民党総裁選は、沖縄県知事選に先立って9月7日告示、20日投開票で行われる。安倍3選が確実視されているが、全国からの連帯で玉城勝利を実現し、安倍日米同盟路線を打ちぬきたい。