「進歩と改革」No.797号    --2018年5月号--


■主張 揺らぐ安倍一強、内閣退陣に追い込もう!

 森友「決裁公文書」改ざんで支持率急落の安倍政権


 一強政治を貫いてきた安倍首相の政権基盤が大きく動揺している。昨年10月、安倍首相は衆議院の解散・総選挙に踏み切った。せっかくの衆議院改憲3分の2議席を失う可能性もあるこの解散に、右翼団体・日本会議は反対したとされるが、それにも関わらず、「森友・加計問題」浮上での安倍政権の不支持拡大・求心力低下を回避するために強行された。結果、野党の自滅に助けられ、安倍首相の狙いは成功し、再び衆参3分の2の改憲議席を得て、「森友・加計問題」をクリアー、支持率が回復し、今年9月自民党総裁選での3選が確実視された上、年内の改憲国会発議と国民投票の早期実施がめざされてきた。しかし、その安倍政治戦略のすべてがいま崩れようとしている。安倍3選が疑問視され始め、改憲作業にも影響してきた。いまや安倍政権は「がけっぷち」である。

 安倍政権を追い詰めているのは、まずは1月22日に招集された第196通常国会で「目玉法案」とされた「働き方改革関連法案」の修正・頓挫である。裁量労働制についての厚労省のずさんな調査とデータねつ造が明らかになり、それに基づく安倍答弁への批判が高まり、「働き方改革関連法案」から裁量労働制の対象業務拡大に関わる部分を削除することが表明された。今次国会は、安倍首相によって「働き方改革国会」と位置づけられていただけに、この目玉法案の修正・頓挫は政権基盤に大きな影響を与えている。

 大きく安倍政権を揺さぶっているのが、森友「決裁公文書」改ざん問題である。安倍政権にとって沈静化させたはずの「森友問題」が再浮上した契機は、3月2日に『朝日新聞』がスクープ報道した「決裁公文書の書き換え疑惑」である。当初、これを認めなかった政府・財務省だが、3月12日、「書き換え」を認めた。正確には「改ざん」である。財務省が公表した改ざん文書は14文書、A4版で78ページ、削除部分は約300か所に及ぶ。公文書管理法には、「公文書等は、健全な民主主義の根幹を支える国民共通の知的資源」とある。その改ざんは犯罪である。政府・国会は、その重大犯罪を明らかにして責任を問わなくてはならない。社民党副党首の福島みずほ参院議員など、国会に「特別委員会」を設置すること提案しているが、徹底した原因究明を進めるべきだ。安倍一強政治・安倍官邸の強権政治の下に起きた改ざん問題で、内閣支持率が急落し、『朝日新聞』調査(3月17〜18日)では、前回調査(2月17〜18日)の支持率44%から31%へと大きく落ち、第2次安倍内閣発足以降、最低となった。不支持率は48%(前回37%)である。安倍内閣打倒へ絶好のチャンスである。 

 森友疑惑解明には安倍昭恵氏の証人喚問が不可欠


 『朝日新聞』のモリカケ報道には、右派ジャーナリズムからの露骨な批判があり、3月2日のスクープにも真偽を問う声があった。『産經新聞』(3月6日)には、安倍ブレーンの高橋洋一嘉悦大学教授が登場し、「政権か朝日のどちらかが倒れる究極の戦いだ。報道が真実なら近畿財務局がお取りつぶしになるなど、財務省の解体がありうる。誤りなら朝日が危機だ」との談話も掲載されていた。『朝日新聞』報道の正しさが証明された後、『産經新聞』に高橋教授のコメントは出ていないから、これは朝日報道への疑義を示すことに力点をもったものであったのだろう。そうした中での『朝日新聞』報道であり、これは“アッパレ”というべきであるが、一番アッパレなのは森友学園問題を最初に告発し、学園への国有地売却額を不開示とした財務省近畿財務局決定の取り消しを求めて、昨年2月に訴訟を起こした木村真豊中市議と市民運動・団体である。この行動・告発がなかったら、日本の政治を質す今日の事態は生まれなかった。

 森友問題の核心は「不当に安い価格で国有財産が森友学園に不正に払い下げられた事実」を明らかにすることであり、そこへの安倍首相と昭恵夫人の関与を明らかにし、その責任を問うことである。この間の国会審議で、財務省の理財局長だった佐川宣寿氏は、森友学園との事前価格交渉を否定してきた。しかし、その答弁はウソであった。その上、改ざん前の決裁公文書には、政治家や昭恵夫人の関与が強く疑われる部分があり、それが根こそぎ削除・改ざんされていた。佐川氏への国会証人喚問が実施されたが(3月27日)、真相は解明されなかった。佐川氏が答えたのは、「(書き換えについて)安倍首相や昭恵夫人、官邸の指示はない」という、政権死守の姿勢であった。国有地不当払い下げと決裁公文書改ざん問題の解明には、安倍昭恵氏の証人喚問が不可欠である。その実現こそが、国会の果たす役割である。安倍首相は「自分や妻がかかわっていたら、総理大臣も国会議員も辞める」と明言してきた。昭恵夫人の国会招致によって、その関与を確かめねばならない。

 安倍タカ派外交からの転換で日朝首脳会談の実現を
 

 安倍政権の行き詰まりは森友問題だけでない。対北朝鮮外交の孤立が鮮明となった。「北朝鮮の微笑み外交に騙されるな」「対話のための対話は意味がない」として「最大限の圧力を行使」するとしてきた米日韓のうち、韓国は4月27日に南北首脳会談を約束し、米朝は5月に史上初めての首脳会談を行うことが合意された。その上に、3月28日には中国の習近平国家主席と朝鮮の金正恩労働党委員長との首脳会談も実現した。こうして首脳会談がセットされないのは、ロシアを別にすれば6か国協議国のなかでは日朝だけとなり、日本は蚊帳の外、安倍外交の孤立が満天下に示されている。

 朝鮮半島の情勢が大きく動きだした。朝鮮半島の緊張が緩和し、核ミサイル危機打開へ進もうとしていることは、我われにとって嬉しいことだ。村山談話を継承し発展させる会主催で開かれた「中国・朝鮮脅威論を超えて市民集会」(3月28日)で、李鐘元早稲田大学大学院教授は次のように講演した。「金正恩政権の対話攻勢は提案のレベルの高さと迅速さにおいて日本で言われる“一時しのぎの戦術”というより、“戦略的な枠組みつくりへの転換”の可能性が高い」。その具体化が米朝首脳会談である。朝鮮の対話攻勢への転換には「経済制裁が効いた」と指摘されるが、李教授は「経済制裁が厳しいのは事実だが、それに耐えきれなくなって緊急避難で打ち出されたものではない」とする。そして米朝首脳会談で見通せるのは「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の放棄である」とした。この講演は外交の重要性を指摘し、安倍政権の圧力政策のお粗末さを実感するものであった。

 いま、どん詰まった安倍圧力政策の打開策として日朝首脳会談の開催がめざされているとされる。李教授は北朝鮮は対米関係改善をめざして、南北・中朝首脳会談に続き、今後にロシア、さらに日本を含めた全方位的外交を始める可能性にも言及した。こうしたときに問われるのは、日本の自主性である。「日米は100パーセントともにある」としてきた安倍首相に、それは可能か。求められるのは、日朝首脳会談を実現する新しい政権である。