「進歩と改革」No.793号    --2018年1月号--


■主張 第4次安倍内閣にモリカケ疑惑・外交を問う!

 驕り高ぶる安倍政治


 総選挙をうけての第195特別国会が11月1日に開会され、衆参両院本会議の首相指名選挙で安倍晋三首相が再選された。同日、第4次安倍内閣が発足したが、8月に改造した全閣僚の留任であった。特別国会は当初、自民党が審議なしの8日間の会期を提案した。狙いはモリカケ疑惑隠しであるが、結局12月9日までの39日間の会期となった。

 総選挙で圧勝した安倍政権・自民党の勝手気まま、驕り高ぶった権力政治がまかり通っている。会期問題もそうだが、野党の国会質問時間の削減を要求し、学校法人「加計学園」が申請していた獣医学部新設を認可し(14日)、さらに衆参両院本会議での安倍首相の所信表明演説はわずか15分で終わった(17日)。やりたい放題である。しかし森友学園問題では、会計検査院が「土地値引きの根拠となったごみの推計量が過大」との報告書を発表し(11月22日)、また国有地払い下げの価格決定に関して、近畿財務局と籠池泰典氏の折衝を録音した音声データの存在を財務省が認めた(27日)。籠池氏が「ぐーんと下げていかなあかんよ」と発言し、これに対して、近畿財務局の国有財産統括官が、「理事長がおっしゃるゼロ円に近い金額まで、私はできるだけ努力する作業をいまやっています」と答えているものだ。17年3月の国会で、財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は、「価格については、こちらから提示したことも先方からいくらで買いたいといった希望があったこともない」と答弁しているから、これは明白な虚偽答弁である。真相が明らかにされなくてはならない。

 加計学園問題では、安倍首相は「加計学園が事業者として決まった今年(17年)1月まで同学園の獣医学部の計画自体を知らなかった」と国会答弁したが、これまたデタラメだ。安倍首相は、「国家戦略特区」の諮問会議議長である。加計孝太郎氏とは「30年来の腹心の友」で、度々ゴルフをしたり食事をしている仲である。1月まで知らないわけがなかろう。こうした虚偽が解明されず、事実が明らかにならず、安倍政権による隠ぺい・ごまかしが許されるのであれば、議会制民主主義の冒とくという以外にない。モリカケ問題での疑惑解明に向けては、安倍昭恵首相夫人と加計考太郎氏の国会招致が欠かせない。国民世論を高め、安倍首相を徹底追及しよう。

 トランプ大統領のアジア歴訪と日米合意の危うさ


 11月6日、トランプ米国大統領が訪日した。その後に韓国、中国、ベトナム、フィリピンを訪問し、ベトナムではアジア太平洋経済協力会議(APEC)、フィリピンでは東アジアサミットに出席した。トランプ大統領の初のアジア歴訪であった。日米首脳会談では、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を共通の方針とすることで合意したが、その原型は安倍氏が2012年11月中旬に執筆し、チェコのHPに発表されたAsia’s Democratic Security Diamond(アジアの民主主義的安全保障の菱形構造)という文書である。矢吹晋・横浜市立大学名誉教授の著書に詳しい(『習近平の夢』等)。その1カ月後、総選挙に勝利した安倍氏は首相に就任して、この文書は、安倍首相の施政方針的意味をもった。ここでは中国の台頭を警戒し、日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による中国包囲網形成が構想されており、日本の孤立を招く極めて危ういものである。

 北朝鮮危機については、安倍首相は「全ての選択肢がテーブルの上にあるとのトランプ大統領の立場を一貫して支持」「日米が100%共にあることを力強く確認」「北朝鮮とは、対話のための対話では全く意味がない」「今は対話のときではなく、北朝鮮に最大限の圧力をかけるとき」と、日米一体化の極めて露骨な姿勢を打ち出した。安倍内閣の姿勢をめぐっては、次のようにも紹介されている。「政府中枢にいる人物が匿名で語った。『米軍の攻撃は今年末から来年早々だと思います』。同じく匿名で自民党幹部も語った。『米軍の攻撃は2日間で完了すると日本に伝わってきています』……つまり北朝鮮有事は、早ければ11月半ば以降にもあり得るのだ。……アメリカはおそらく金正恩氏の斬首作戦も決行するだろう。ここまでは明白だ」(櫻井よしこ、週刊新潮10月26日号)。右翼の櫻井氏は、親しい政府中枢・自民党幹部の発言を紹介しているわけで、危険な安倍政権の姿勢を読み取ることができる。憲法9条をもつ日本の政治家として許されない発言である。

 トランプ大統領のアジア歴訪のひとつの狙いは、北朝鮮包囲網の形成にあった。しかし、米中首脳会談で習近平国家主席は、「対話と交渉を通じて、朝鮮半島の核問題の解決に力を尽くす」とし、トランプ大統領に同調はしなかった。安倍首相と決定的に違い、共感できる発言だ。トランプ大統領はアジア歴訪後、北朝鮮をテロ支援国家に再指定した(11月20日)。この間2カ月にわたりミサイル試射を実行してこなかった北朝鮮に対する愚かな行為である。これに対して、北朝鮮が29日、新型ミサイル「火星15号」の試射に成功し、特段に緊張が高まった。「米朝はともに開戦したいとは考えていないが、緊張と対決の中で相手をさらに刺激する措置をとることによって、判断の誤りを犯す確率はますます高くなる」(中国・環求時報)と指摘される。北朝鮮危機打開へ、「対話」「交渉」「外交」の重要性と米国の核威嚇政策の転換が声高く力強く訴えられなくてはならない。

 アベ改憲阻止にむけて


 安倍首相は、第4次安倍内閣組閣後の記者会見で、「憲法改正には3分の2の賛成による発議が必要。与党で3回連続、3分の2(議席)をいただくことができた」「憲法審査会に各党が改正案を持ち寄って、建設的な議論をしていくことが大切だ」と発言した。安倍首相は、さる6月、「来たるべき臨時国会が終わる前に、衆参の憲法審査会に自民党案を提出したい」としたが、7月の東京都議選に大敗し、自民党内に安倍改憲案への批判もあって、その動きは失速していた。そこに総選挙の勝利があり、今回の発言である。自民党憲法改正推進本部は11月16日、総選挙後初の全体会合を開き、参院選挙区の合区解消について議論した。参院選挙区合区解消は、総選挙での自民党の改憲公約の中に掲げられたが、もちろんアベ改憲の本丸は9条への自衛隊加憲である。今後に、自民党内の議論は早まっていこうし、アベ改憲阻止へ決意を一段と強めるときである。

 安倍首相は、総選挙での改憲3分の2議席獲得を誇るが、安倍大勝とは「小選挙区制」という「からくり」によって生み出されたものだ。自民党の比例票は33%でしかなく、絶対得票率は17%である。全国民の6人のうちの1人である。その点で、安倍内閣を押し上げている支持基盤はぜい弱であり、今後、モリカケ問題や憲法9条をめぐる国会論戦と市民運動のうねりを形成することによって、安倍内閣を追い詰めていく条件は十分にあるといえよう。「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」も立ち上がった。闘いのときである。