「進歩と改革」No.791号    --2017年11月号--


■主張 アベ改憲阻止・安倍政権打倒へ総選挙に勝利しよう!

 「身勝手」「森友・加計疑惑隠し」の7条解散


 日本国憲法第53条は、「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と規定する。これに基づいて民進、共産、自由、社民の野党4党が、臨時国会の召集を要求したのは6月22日であった。それから3カ月以上が経過したが、安倍内閣は憲法上の正当な要求を無視し続けた挙句、9月28日に召集した第194臨時国会の冒頭で衆議院を解散した。国会質疑は一切なかった。安倍政権による国会軽視もここに極まった。まさに安倍首相の「身勝手解散」という以外になく、憲法7条を使っての解散権の濫用・私物化である。総選挙日程は、10月10日(火)公示、22日(日)投開票である。

 臨時国会が開催されれば、当然に森友・加計学園問題が追及されるはずであった。森友学園問題では、国有地売却に首相夫人の昭恵氏の関与が明確な上に、財務局職員の音声テープが出てきた。安倍首相の「腹心の友」である加計孝太郎氏を理事長とする加計学園の獣医学部新設問題では、安倍首相周辺の「忖度」と首相自身のウソが問われ、追及されるところであった。安倍首相は、そこから一目散に逃げた。「森友・加計疑惑隠し解散」である。

 北朝鮮危機に便乗する安倍首相を糾弾する


 加えて、この解散は「北朝鮮危機便乗解散」である。安倍首相は9月25日の記者会見で、「国民の皆さまは北朝鮮の度重なる挑発に対し、大きな不安を持っておられる」「こういう時期にこそ選挙を行うことによって、この北朝鮮問題への対応について国民の皆さんに問いたいと思います」とした。少子高齢化と緊迫する北朝鮮情勢を「国難」とし、「『国難突破解散』で、国民に信を問う」(自民党機関紙『自由新報』)という。「国難」などと国民を驚かせる。ナオミ・クライン氏の「ショック・ドクトリン」「惨事便乗型資本主義」ではないが、ショックに便乗し、さらにショックをつくり上げながら、政権の延命を果たそうとしている。

 安倍首相の国連演説のウソ


 北朝鮮危機をめぐって、許せないのは安倍首相の第72回国連総会での演説(9月20日)である。そこで安倍首相は「国際社会は北朝鮮に対し、1994年からの10有余年、最初は枠組み合意、次には6者会合によりながら、辛抱強く、対話の努力を続けたのであります。しかし我々が思い知ったのは、対話が続いた間、北朝鮮は、核、ミサイルの開発を、諦めるつもりなど、まるで持ち合わせていなかったということであります。……北朝鮮に、全ての核、弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で、放棄させなくてはなりません。そのために必要なのは、対話ではない。圧力なのです」とした。

 北朝鮮は、核廃絶にむけた国際合意を破り続けてきた――ここに安倍首相のウソがある。関西学院大学教授の平岩俊司氏と元公安調査庁調査第2部長の坂井隆氏の対談本(『独裁国家・北朝鮮の実像』)から、次の指摘を見てほしい。

 坂井 合意枠組みを、どちらが壊したかという議論もありますが。
 平岩 私はやっぱりアメリカが壊したと思いますよ。94年の段階でどうして合意に達したのか。クリントン政権はアメリカの議会に対して、「北朝鮮という国は今後5年もたない」と、崩壊を前提にして説得したということが言われていました。ところがブッシュ(ジュニア)政権になっても、北朝鮮は崩壊しない。「おかしいではないか」という声が上がり、ついには「だったらこの合意枠組み自体がおかしいんじゃないか」という話にまでなった。当時のブッシュ(ジュニア)政権はかなり強引で、北朝鮮に対して査察をどのタイミングで受け入れろかとか、94年の枠組み合意の時になかった話を持ち出してるんですね」。

  平岩教授は「北朝鮮は合意内容は最低限、守っていた」とも言っている。安倍首相は知ってか知らずか、こうした指摘に背を向けて、自分勝手に都合のいいフィクションをもって国内外で北朝鮮を批判し、脅威を煽り、「全ての選択肢はテーブルの上にあるとする米国の立場を一貫して支持」して立ち向かうという。これは北朝鮮への先制軍事攻撃も選択肢に入れる米国の行動も支持するということである。平和憲法の理念を破壊する好戦発言であり、決して許してはならないものである。ウソで固めた北朝鮮脅威論に負けず、安倍政権への批判を高めたい。

 アベ改憲に終止符を


 安倍首相には当初、来年の通常国会での改憲発議をめざし、衆議院での改憲3分の2議席の維持を優先し、年内解散は避けるとの説があった。しかし、改憲発議の困難さが想定されるなか、時間的余裕を確保しつつ改憲に着手しようと来年9月の自民党総裁選での3選を決意し、解散に踏み切った。結果、衆議院の改憲議席は白紙に戻ったが、再び、3分2議席を取らしてはならない。今回の総選挙は、アベ改憲の道を断つ決定的な選挙である。

 この総選挙を前に野党の再編が起きた。野党第1党の民進党があまりの不人気に、小池百合子東京都知事の希望の党へ″なだれ込み”を決定し、安倍自公政権vs立憲4党(民進、共産、自由、社民)の対決構図が崩れた。『東京新聞』(10月1日)は、「自・公vs希望・維新vs共・社・無所属」と表現した。ネットでは、カップ麺のどん兵衛に例えて「赤い小池(共産党書記局長)に緑の小池(都知事)」と話題になっているそうだが、要は3極構造になってしまった。希望の党の理念は「寛容な改革保守」で、保守2大政党をめざしている。寛容とは言うが、「小池『民進左派を排除』」(産經新聞)の小池一人独裁党だ。「排除の論理」は、かつての鳩山民主党結党時とよく似ており、デジャヴ(既視感)である。

 この間、安保法制に反対し、その廃止へむけて闘う立憲4野党+市民連合の共同が追及されてきた。この共同の精神と行動は、形を変えても失われてはならないものだ。我われは第1に、この立脚点にたち総選挙を闘い、社民リべラル勢力の前進と第3極の強化を勝ちとりたい。そのためにも第2に、流動化する民進党のなかから新党・無所属で立候補する候補者などと多様な形で共同の輪が拡がればいい。第3に、希望の党とはどうか。安保法制を容認しており危険だが、憲法について小池氏は、9条3項に自衛隊を明記する安倍首相の改正案には反対している。小池氏はまぎれもない右派改憲論者であり、維新の会との連携もあり、今後に変化が想定され警戒すべきだが、現状ではアベ改憲とは異なっている。希望の党の候補者も一様ではなく、選挙区事情もちがうなかで闘いがアベ改憲阻止・安倍政権打倒へ結果することは可能であろう。