「進歩と改革」No.788号    --2017年8月号--


■主張 共謀罪強行、モリカケ疑惑隠蔽の安倍政権を倒そう

 「外に戦争、内に治安」の安倍政治の針路を塞ごう


 「共謀法、知れば知るほど怖ろしい!」「共謀法NO!」との声に背を向けて、自民党、公明党、日本維新の会は6月15日早朝の参議院本会議で共謀罪法案を強行可決した。参院法務委員会での審議を一方的に打ち切り、委員長が本会議で「中間報告」するという強引な手法を使っての採決であった。

 共謀罪法は、「既遂」の処罰を基本とする日本の刑法の原則を変更するものである。犯罪が実行されなくても計画の段階で277の罪で処罰できるようになる。話し合うことが罪になる! そこから生じるのは警察・公安など捜査機関の権限の拡大と監視社会の深化であり、不当捜査・逮捕の増大である。内心の自由が侵害され、市民団体などへの監視・弾圧が強まる悪法という以外にない。我われはこの共謀罪法案の強行可決に強く抗議する。

 今回、政府は法案で、「共謀罪」を「テロ等準備罪」に言い換えて、改正組織犯罪処罰法として成立を計った。2020年東京五輪・パラリンピック成功のためにはテロ対策が必要であり、2000年に署名した国際組織犯罪防止条約の締結のためにも不可欠だとして、テロは怖いという市民感覚を巧妙に取り込んで法成立を計った。しかし、法の目的には「テロ対策」が消えて、「条約締結」だけになっている。テロ対策というのはまったくの欺瞞であり、この共謀罪法は決してテロ対策のためのものではない。

 安倍内閣の下で2015年に戦争法が成立した。2012年には秘密保護法も成立している。こうした「外に戦争、内に治安」という安倍政治の針路を、我われは塞がねばならない。通常国会は6月18日に閉会したが、安倍政治の危険を今後とも訴え、共謀罪の発動を許さない取り組みを強めていかねばならない。

 「モリカケ」疑惑の徹底解明を


 この間の日本政治の大きな特徴は「首相官邸暴走」であった。「首相官邸暴走」の底流には、森友学園問題に関連した閣議決定の乱発、公文書の保管の問題、教育勅語の扱い方、沖縄基地問題への対応などがあり、この民主主義を軽視した一連の流れの先に「共謀罪」があると、識者によって指摘されてきた。森友学園問題では、時価が10億円以上と考えられた国有地が1億3400万円で払い下げられ、そこに安倍首相夫人の安倍昭恵氏が深く関与したことが明らかである。財務省は関係文書の破棄や隠蔽で、情報開示を拒否してきた。野党は安倍昭恵氏の国会招致を要求してきたが、昭恵氏は一度も公の場で説明をしていない。

 そこに加計学園問題が加わった。安倍首相の米国留学時から30年来の友人である加計考太郎氏が理事長を勤める学校法人・加計学園の獣医学部新設について、安倍首相の関与が問われている。この問題では、国家戦略特区による規制緩和が利権構造と結びついている姿が明らかになった。『東京新聞』に掲載された、佐藤正明氏による三コマ漫画がネットで話題になった。安倍首相が蕎麦屋で「モリにしますか、カケにしますか」と聞かれ、「わーっ!!」と逃げ出すもので、安倍首相を痛烈に皮肉ったものだ。森友と加計で「モリカケ」疑惑であるが、双方ともアベ友であり、安倍首相による権力の私物化によるものである。

 『朝日新聞』が、加計学園による獣医学部新設は「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などとした文科省内部文書の存在を報道した(5月17日)。民進党も同様の文書を手に入れ、政府を追及したが、菅官房長官は当初、これを「怪文書」とし、松野文科相は「文書の存在は確認できなかった」とした。しかし、前川喜平文科省前事務次官の「あったものをなかったと言うわけにはいかない」との証言があり、さらに文書の存在を認めた文科省官僚の内部告発証言が行われた。首相官邸・政府の嘘八百がバレた。野党は前川氏の証人喚問や臨時国会召集を求めているが、与党はこれを拒否している。しかもその上に、首相官邸は読売新聞と一体で、前川氏へ人物破壊攻撃まで仕掛けた。一方で強行したのが憲法違反の共謀罪法の可決である。安倍政治の卑劣さが明らかになった。

 こうした国民をなめきった安倍政治へ批判が、新聞各社の世論調査で高まった。「安倍一強」とされた体制が崩壊する序曲である。その後にも、「自衛隊政治利用」へ稲田防衛相の発言があった。暴走・利権の安倍政治への批判をさらに強め、安倍内閣打倒へとすすんでいきたい。野党・市民共同の力を築く努力を重ねたい。