「進歩と改革」No.724号    --2012年4月号--


■主張 社民党党首選と第13回定期全国大会を終えて


  
 社民党の第13回定期全国大会が、2月24日から25日かけて、東京・日本教育会館で開催された。議案は、@2012年―2013年運動方針案、A衆議院総選挙闘争方針案、B参議院選挙闘争方針案・2012年―13年中間選挙の闘い案であり、役員改選であった。大会冒頭、党首選挙実施本部から、先に行われた党首選挙で、福島みずほ党首が当選したことが報告された。今回の党首選と全国大会を振り返り、そこから社民党に問われる課題を指摘しておきたい。


福島党首無投票5選が突きつけた「党首選規則」の見直し

 社民党の党首選挙は、1月20日に告示され、現党首の福島氏が、所属する神奈川県連合と衆院3名、参院1名の4名の国会議員の推薦を受けて届出、他に立候補者はなく、無投票で五選された。ここに至るには、阿部政審会長、照屋国対委員長、服部参院議員の3氏が記者会見し、山内参院議員を含め、「福島党首の在任期間に党勢は着実に後退が続いている。現在の体制を継続することは大きな疑問だ」との声明を発表し、福島氏への対抗候補の擁立をめざすことを表明した。

 党勢の後退は何も福島党首個人の責任とは思えないし、新聞を賑わせたこの記者会見、その後の発言内容には、多くの党員が戸惑ったことであろうが、党内にあるさまざまな意見を反映して党首選が実施されることは、政党として当然のことである。しかも、社会党から社民党へ党名変更して以来、党首選は一度も実施されてこなかったこともあり、今回、当初から出馬の意思を示してきた福島氏と対抗候補とがともに立候補することで、党内論議を活性化し、党員に選択の場を提供することは大事なことであった。しかし結局、党首選は実施されなかった。阿部氏や照屋氏らの動きに続き、社民党ユース・メンバーらの青年党首候補擁立へ向けた動きも起きたが、いずれも「党首選挙に関する規則」(党首選規則)をクリアーできずに終わった。この過程で浮上したのが、党首選規則の見直し問題である。

 社民党の党首選規則では、「立候補者の資格」は「党員で所属県連合の推薦と200名以上の党員の推薦を受けた者、もしくは党員で所属県連合の推薦と国会議員の3分の1以上の推薦を受けた者とする」となっている。この規則の下で、今回、福島党首も国会議員の推薦人確保に苦労した。この規則は、2005年に定められたものである。当時から立候補要件が厳しすぎるのではないかとの論議があり、修正の上で決定された。しかし、党首選規則や党則は、党の組織現状や党員意識を踏まえつつ、常に検討・見直し・改正が必要であろう。そこで求められるのは、現代社会民主主義の政党としての組織原則の検証であり、現状との適合性であろう。候補乱立も困るが、社民党が民主集中制を採らない以上、立候補要件の緩和が望ましい姿である。この立場から、今後、党内に「党首選規則検討委員会」の設置などで、二年後の党首選にむけた活発な論議を開始することを希望したい。


党首あいさつの実践が問われている

 社民党は、全国大会議案で「わが党のこの10年間の選挙結果の推移を見ると、衆院比例代表の得票数・率は2000年の560万票から2009年の300万票へと46%低下し、また参院比例代表では2001年の363万票から2010年の224万票へと36%低下しました。依然、この傾向を脱却するに至っておらず、このままで総選挙に臨めばさらに厳しい結果を招きかねません」とするように、党勢の衰退に直面している。最近の新聞各社の世論調査では、支持率が1%や0%とされることが多い。

 そうしたなかで開かれた大会は、社民党再生への努力を結集し、総選挙への決意・体制を固めることが問われた。この点では、大会での福島党首挨拶が課題を指し示すものとなった。福島党首は「今度の党大会が、力みなぎる社民党の再生になるように心からお願いする」と前提しつつ、「社民党は社会民主主義を実現していく党」、「現在の政治の対立軸は、社会民主主義か新自由主義か」にあり、「社民党はリベラルな、生活や生命を大事にする人々を結集し、第三極を作る」とし、最後に「今後の選挙が、正念場であり、生きるか死ぬかの闘い。がんばりましょう」と結んだ。この「社会民主主義の党」「社会民主主義か新自由主義か」「第3極」「生きるか死ぬかの闘い」という言葉は、いまの社民党が自覚し、共有化し、思想化し、主体化しなければならないことである。


エコロジー・分権の思想の獲得を

 全国大会では、地震・津波・原発事故の「複合震災」に遭遇した福島県からの特別報告をはじめ、活発な論議が行われた。統一自治体選で勝利した香川県連合や島根県連合、大分県連合、さらに青年自治体議員の報告は、全国の代議員を大きく励ますものであったろう。また今年6月に県議選を迎える沖縄県連合の闘いの発言も力強いものであった。しかし、大会の全体の雰囲気は、統一自治体選敗北の影響が色濃く残る大会でもあったことが否めない。その沈滞からの脱却こそ必要である。

 社民党に求められるのは、端的に「1%政党からの脱皮」への日常的努力である。そして、その努力は思想と組織上の戦略課題と一体で追求されなくてはならないのではないか。問われるのは、@エコロジーと分権の思想・戦略の獲得、A党首選規則見直しだけに留まらず、市民社会に適応した党組織論である。前者については、全ての政党が脱原発に転じたこともあり、社民党が敗北した福島県議選を総括し、脱原発が社民党の支持拡大に結びついていない現状を踏まえ、エコロジーの党へと改革することの必要性を指摘したい。

 分権については、大会で注目すべき一つの発言があった。兵庫県連合の小柳代議員の発言である。小柳代議員は、「分権の議論が行われていないことを危惧する。議案も陳情型政治の基調になっている。これでは大阪維新の会に勝てない。社会民主主義は分権を重視すべきだ」と、敗れたとはいえ全国に先鞭をつけた尼崎市の公契約条例運動を例に、各県各地での条例制定運動を呼びかけた。時代に向き合った発言であり、社民党の遅れを指摘する発言であり、社民党の明日を拓く発言であった。こうした提起を社民党改革に結びつけたい。

 なお全国大会では、幹事長人事をめぐり重野幹事長と服部衆院議員との間で投票が行われ、173票対57票で、重野氏が留任した。これは、意見が違ったら選挙で決着し、その後は共同するという党運営・党内民主主義の観点からして、良いことである。党首選もこうあるべきである。日本で唯一、社会主義インターに結集し、世界に連なる社民党の存在は貴重である。社民党の改革・前進を期待したいし、頑張ってほしい。