「進歩と改革」No.716号    --2011年8月号--


■主張 さようなら原発1000万人アクションの成功を!


  
福島第一原発は「メルトダウン」から「メルトスルー」へ

 6月23日『東京新聞』の「こちら特報部」欄に衝撃的な記事が掲載された。福島の原発事故についてである。東電は事故から2カ月後、やっと福島第一原発のメルトダウンを認めた。そして、溶融した核燃料が原子炉圧力容器を破壊し、外側の格納容器に堆積したとして、これを冷却するため外部から水をかけてきた。しかし、こうした東電・政府の対応について、小出裕章・京都大学原子炉実験室助教が、まったく異なる見立てをし、状況はもっと深刻だと指摘しているのだ。

 小出氏によると「溶けたウランの塊は格納容器の底をも破り、建屋コンクリートの土台を溶かしつつ、地面にめり込んでいる。外から水をかけても、もはや(核燃料を)冷やすことはできない」という。核燃料が圧力容器の下部に溶け落ちることを「メルトダウン」(炉心溶融)といい、さらに外側の格納容器まで突き破ってしまうことを「メルトスルー」(溶融貫徹)という。『東京新聞』によれば、「溶け落ちた燃料は2800度。鋼鉄製の圧力容器と格納容器は1400〜1500度で溶ける。小出助教の指摘通り、少なくとも一号機については、、核燃料が建屋の床に落ち、地中に沈み込んでいる可能性がある」「現在の福島では『メルトスルー以上、チャイナシンドローム未満』の緊急事態が進んでいる」としている。恐ろしい事態である。

 一日も早い原発事故の収束を願わずにはいられないが、それにしても東電・政府の見立ては正当なものであろうか、対処方法を誤っているのではないか、との疑問は深まる。この間に注入された冷却水は、原子炉建屋とタービン建屋の地下階、タービン建屋から海近くまで延びる作業用トンネル(トレンチ)に大量に溜まっている。東電は、その高濃度汚染水が海に流れ出すのを防止するため、日立、東芝、仏・アレバ社、米・キュリオン社合体の浄化装置を設置した。この浄化装置もトラブル続きで、今後どこまで機能するのか心もとなく不安だが、例え機能したとしても対策として十分なのか。この点で、小出氏は被害を最小限に抑えるためには「原子炉建屋周辺の地下に(核燃料と地下水を遮断する)壁をもぐらせるべきだ」と提言している。「核燃料が地下水と接触すると、汚染水が海に流出したり、地下水脈から広がってしまう」という小出氏の懸念を、東電・政府は受け止めてもらいたものである。


9・19集会と1000万人署名を柱に

 原発事故収束のメドが立たない現状を見ても、脱原発にむけた運動の強化が求められている。事故発生から3カ月の6月11日には、「脱原発100万人アクション」が全国約140カ所で行われ、推計約6万人が参加した。都内数カ所のデモが集結した新宿アルタ前は2万人を超える人びとで溢れた。ドイツ、スイスでは脱原発への政策決定が行われ、イタリアでは国民投票に勝利した。日本における本格的な運動展開は今後の課題である。

 いま原水爆禁止日本国民会議、原子力情報資料室、環境エネルギー政策研究所の3団体が実行委員会を構成する「さようなら原発1000万人アクション―脱原発・持続可能で平和な社会をめざして」が呼び掛けられている。このアクションの柱は、5万人規模をめざし明治公園で開催される「原発にさようなら9・19集会」(全国各地でも開催)と来年3月までに1000万人を目標に展開される「原発にさようなら署名」である。このアクションが、脱原発という課題に労働運動がしっかりと結び合い、さらに脱原発派議員の結集など政治へ確実に影響を及ぼす質をもつものであるよう願いたい。

 9・19集会の前には原水禁大会がある。今年は、原発事故を受け、世界大会が、広島・長崎だけでなく、福島そして沖縄で開催されることが大きな特徴となっている。「人類と核は共存できない」としてきた原水禁日本国民会議の真価が問われる夏であり、今年の大会は格別の意義を持っている。社民党全国連合も「脱原発アクションプログラム」を策定し、7月2日には「東日本大震災・福島の被災地をめぐる調査活動」を展開、翌日には「原発災害と低線量被曝を考える福島集会(社民党国会調査団報告)」を開催する。夏からか秋へ、総行動のときである。原発をストップさせることは、「第二の敗戦」からの民主主義の復興・再興であり、新たな社会づくりへの着手である。本誌も「さよなら原発1000万人アクション」に強く連帯し、その成功の一端を担いたい。