「進歩と改革」No.707号    --2010年12月号--


■主張 社民党「再建計画」方針(1次案)に思う


     
 参院選の敗北を受けて、この間に再建論議を進めてきた社民党が、プロジェクトチーム(又市征治委員長)の成案を経て、全国連合常任幹事会として「党再建計画」方針(1次案)を決定した。『社会新報』(10月6日)によれば、「方針案は、この間の党勢退潮の基本的要因は『基礎体力の低下に伴う党の影響力の低下にある』と分析。その上で、主体的力量の強化・党勢拡大を図る上でも、現下の情勢で『どのような政治勢力と連携し、主体性を維持しながら具体的な政策課題の実現を目指すかを明らかにする必要がある』と問題提起し、『党の旗幟(きし)・展望を明確にしないで党勢拡大と議席増は実現できない』とした。さらに、参院選後の『新自由主義的政治への回帰傾向』に歯止めをかけ、国民の生活再建を実現するためには『政策実現で一致する政治勢力との連携』を検討する必要があるとした上で、自民党などとの連携はありえず、『三党連立政権の“政策合意”の実現を共同責任としている民主党や国民新党との連携・選挙協力をまずは模索・協議する必要がある』と指摘。『昨年の連立合意に押し戻す努力の結果によって、政権との協力の立場(閣外協力または連立復帰)に立つのか、それとも野党の立場(独自路線)を貫いていくのか、わが党の立ち位置をおのずかと定まると言える』」としている。この方針は、「今後、党内論議と党各級組織での再建計画策定を並行して進め、党常幹第二次案の取りまとめを経て、来年1月開催をメドとする機関会議での確認を目指す」という。以下に、若干の感想を述べてみたい。

 この方針の特徴は、党再建計画を本格的に提起するというより、、菅民主党政権への「閣外協力または連立復帰」の提唱という性格を強く持っていることにある。というのも、方針の本旨はU「政権へのスタンス」にあり、ここでは、「多くの国民が自民党的政治からの転換を民主党に期待していることも事実」「労働組合・連合が民主党を全面支持する方針をとっているのもこの点にあり」、「だとすれば、私たちは、三党連立政権の『政策合意』の実現を共同責任としている民主党や国民新党との連携・選挙協力を、まず模索・協議する必要があります」と論理展開されているからである。菅政権への社民党の立ち位置を定めることは重要であり、民主党との協議を否定するものではないが、方針が期待を繋ぐほどに、まず「連立復帰」の条件があるのだろうか。社民党と菅政権との間合いについては、菅首相の「公・社へ熱烈求愛」が報道される状況にある(『朝日新聞』10月9日)。しかし、鳩山内閣崩壊の過程、そして菅政権の唱える「現実主義」での対米関係、菅政権内の松下政経塾・保守グループの影響などを考慮すると、菅政権が沖縄・普天間問題で三党政策合意に立ち戻り、社民党が連立に復帰する可能性などないと判断するのが妥当ではないか。これを前提とすれば、より具体的に問われるのは「閣外協力」であろう。本誌は、鳩山政権発足にあたって、閣外協力ではなく閣内協力を主張したが、それはより積極的に社民党の政策を政権に反映・押し込むことを希望したものでもあった。しかし、政権への責任度において、閣内と閣外の違いは存在する。同時に、今回、社民党が閣外協力を主張する場合においても、連立離脱に至った沖縄問題抜きには考えられない。沖縄問題は、連立合意した10大項目(個別政策は30項目超)の一つにすぎないとの主張もあるが、民主党の妥協がない中では党内事情からしても困難であろう。もし閣外協力の条件があるとすれば、何よりも沖縄県知事選で伊波予定候補の勝利を実現し、その上に菅政権の政策修正を求める過程ではじめて検討課題になるのではないか。沖縄県知事選を控えた今日情勢において時宜に適った提起ともいえない。

 社民党「再建計画」は、連立政権対応とは本来別に立案され、「基礎体力の低下に伴う党の影響力の低下」の要因に迫り、克服策が論議されるべきであろう。この点では、今回の方針「大衆運動の強化と支持基盤拡大について」では、「労働運動をはじめとした連帯・共闘なくして政治転換も、わが党の発展もありません」とされている。一方、「基本組織である支部活動の活性化」のための「地域活動の展開」に言及されてはいるが、その具体的提起は欠けている。一言でいえば、労働組合偏重の運動論・組織建設論とは言えないか。市民社会論、労働・環境・福祉の取り組みへ対応し、住民自治の時代に立脚した運動論と組織論が求められる。これは、自治体議員の増大へむけた方針と一体をなすものである。加えて、方針に決定的に欠けているのは「社民党の現代化=現代社会民主主義政党化」への「本部体制の刷新」の指摘である。財政的困難もあろうが、社会民主主義センターの設立、あるいは学者・知識人の協力体制の構築、広報活動のあり方などを具体的に検討し、提起すべきであろう。本部体制改革の提起と一体でこそ、方針は全党員の共感を得て、意義を持つものとなるに違いない。