「進歩と改革」No.703号    --2010年7月号--


■主張 社民党の連立政権離脱について―参議院選挙勝利へ、新たな決意と態勢を準備しよう!



 社民党は、5月30日の全国幹事長会議において、鳩山連立政権からの離脱を決定した。28日の日米両政府外務・防衛担当閣僚(2プラス2)の共同声明とその後の閣議での対処方針決定を受けての判断であった。

 日米共同声明では、普天間飛行場の移設先について、「1800メートルの長さの滑走路を持つ代替の施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置する」とされた。この現行案回帰の「辺野古」明記に、社民党党首である福島みずほ消費者・少子化担当相は強く反対したが、鳩山首相は米国との合意を優先し、福島大臣の罷免に踏み切った。鳩山内閣では、政策決定の内閣一元化が謳われ、連立した各党の党首が入閣したことから、福島大臣の罷免は社民党の切捨てと同義であり、また沖縄県民の願いの切捨てである。これでは政権に残れない。社民党の連立離脱は残念なことであるが、ここに至っては正当な判断であるといえる。この事態を招いた鳩山首相の責任は極めて重く、鳩山首相は辞任すべきである。

 日米共同声明の決定にあたっては、昨年の総選挙で「国外、最低でも県外」とした鳩山首相の言行不一致が強く批判されている。この批判は当然であるが、いま一つ、特徴的であったのは北朝鮮脅威論が露骨に利用されたことである。記者会見で、鳩山首相は「最近における朝鮮半島情勢など、東アジア情勢は極めて緊迫している。日米同盟が果たしている東アジアの安全保障における大きな役割をいかに考えるか」と強調した。日米共同声明には「北東アジアにおける安全保障情勢の最近の展開により、日米同盟の意義が確認された」とある。ここに、3月に起きた韓国哨戒鑑「天安」沈没事件が影響していることは、容易に見てとれる。しかし、「天安」沈没事件では、北朝鮮の犯行とした国際軍民共同調査団の調査結果について、多くの疑問点が指摘されているのも現実である。鳩山首相が、5月4日に沖縄訪問した際に強調した「抑止力」発言とも照らし合わせると、今回の鳩山政権の決定には、この間の安保・防衛政策上のタカ派的転換がさし示されているといえよう。

 社民党は、連立離脱して、きたる参議院選挙を闘うことになった。社民党にとっての一丁目一番地(福島党首)であり、メガトン級の問題(辻元議員)である沖縄問題で沖縄県民との思いを共有できたのはよかったし、そこには社会党・社民党と続いてきた歴史の原点がある。

 しかし、連立離脱に際しては、指摘したいこともある。一つは、福島大臣罷免・連立離脱決定の前段階で、「辺野古」を明記せず、「与党の合意、地元の合意が前提」とした政府対処方針で連立離脱を回避する動きが党内から起きたことに関してである。これは、三党政策合意に謳われている「生活再建」や憲法遵守の課題を、連立政権内に位置し、実行したいとの党員の思いに応えたものである。それは理解できることであり、社民党として、連立政権対応の戦術は幅があってよい。と同時に、鳩山首相と政権中枢の動きを見れば、結局のところ、その実現は困難なことではなかったか。二重基準との批判も、当然あろう。今回の事態は、社民党の主体的立場からすれば、5月決着阻止の主張を通せなかったことになる。鳩山政権は、社民党との連立を解消し、政権基盤を弱体化させてまで、アメリカの圧力に迎合し、辺野古案での五月決着へ固執していたということである。

 いま一つは、今回の政権離脱決定を、「連立はもともと無理であった」という精算主義的な立場で正当化することへの危惧である。連立がもともと無理であったなら、国鉄1047名問題の解決などあり得なかったことになる。また、かつての55年体制下の思考や「昔は良かった」式の先祖返りの思考が復活することもあってはならないことである。社民党員も高齢化し、そうした思考が容易に復活しやすい状況にあるだけに、この点も指摘しておきたい。社民党に、連立時代と連立政権への対応力が問われていることは変わりないはずである。

 参議院議員選挙が間近に迫ってきた。社民党の連立離脱は有権者にも一定の共感を得ているようだが、党員の一時の高揚感で、参議院選挙が闘えるものでもあるまい。自らの主体構築を抜きに、連立離脱を主張し歓迎しても、それだけで前進の展望が切り開けるものでもないであろう。この点は、社民党の各県各地区がしっかりと踏まえておかねばならないことではないか。社民党の決定を投票行動へ結びつけるのは、やはり党の政策アピール力・行動力のアップしかない。本誌は、連立政治に習熟すべき社会民主主義政党としての社民党が、その発展性を閉じることのないよう願うし、きたる参議院選挙での社民党の前進を読者とともに決意したい。