「進歩と改革」No.698号    --2010年2月号--


■主張 社民党全国大会へ向けて



福島党首四選と沖縄問題

 社民党の第12回全国大会が、1月23日から24日にかけて社会文化会館で開催される。鳩山政権が発足して 昨年12月8日で100日を経過した。大会は、鳩山政権への社民党の役割を問う極めて重要なものとなろう。当日は、 @党首選挙実施本部報告、A幹事長報告、B第四五回衆議院議員総選挙総括、C中央規律委員会報告が行われ 、@第一号議案「2010〜2011年運動方針」、A第二号議案「第22回参議院議員通常選挙方針」、B第三号議案「第17回 統一自治体選挙方針」、C第四号議案「党役員の改選に関する件」、D第五号議案「全国連合・県連合の決議」が提案され、論議される。

 全国大会に先立ち、12月4日、党首選が公示されたが、党首選を前に沖縄問題が緊迫化した。 年内決着の動きが強まったのである。11月25日には、社民党国会議員団による平野官房長官、岡田外相 、北沢防衛相への申入れが行われた。この時、山内徳信参院議員は「俺を殺してからやれ!」と、米 軍基地の負担に苦しんできた沖縄の想いを三人にぶつけた。しかし、11月27日、鳩山首相は仲 井真沖縄県知事と秘密会談をし、12月15日までに、普天間飛行場の辺野古移転の現行案で態度表明することを伝えた とされる。こうした動きを受け、12月3日の社民党常任幹事会の場で、福島党首は「もし辺野古に海上基地をつ くる決定をこの内閣が行えば、重大な決意をしなければならない」と発言。この発言に前後して、鳩山首相は年内 決着の方針を転換し、15日の基本政策閣僚委員会で正式に決定され、連立三党による沖縄基地問題検討委員会 の設置が確認された。そこへ至る過程では、社民党国会議員による民主党幹部に対するさまざまな働きかけが行 われたことも報道されている。社民党沖縄県連合は、照屋寛徳衆院議員を党首選に推薦していたが、照屋議員は 「福島党首の強い決意と覚悟を共有できた」として出馬を見送り、福島党首の四選が無投票で決定した。これは良かった。

 党首選は、本来、複数候補で争われるべきものであるが、社民党を代表して福島党首が入閣し た以上、新政権発足間もない現時点で福島党首を支える体制が求められる。党首選に関連して、 「党首・閣僚の二頭立て」論もあったとされるが、「政策決定の内閣一元化」を謳った鳩山内閣 においては説得力に欠けるのではないだろうか。党首代行の設置が社民党の発信力を高めるとも 思えない。発信力を持つのは、やはり閣内からであり、それと連動した地域・職場からの活動である。


社民党の連立参加がもつ意義

 全国が注目する沖縄県名護市長選挙は、1月24日投票である。きたる全国大会は、四選され た福島党首を先頭に、社民党が沖縄問題への強いメッセージを発信するものとして開催され なくてはならない。沖縄・宜野湾市と伊波洋一市長からは、米軍が06年9月に発表した「 グアム統合軍事開発計画」、また09年11月の「環境影響評価」の報告書草案で、米軍は沖縄海 兵隊の大半をグアムへ移す計画を進めていることが指摘されている。辺野古は「移転」ではなく 「新基地」なのである。社民党内にはプロジェクトチームも設置された。座長は照屋寛徳衆院議 員である。現地住民運動と沖縄県民の声、そして社民党の閣内からの主張によって、辺野古案を 阻止する条件はできつつある。グアム移転案の具体化へむけた作業の進展を期待したいし、大会 での活発な議論を望みたい。合わせて、現地住民運動へ全国から一層の連帯形成を強めよう。社民 党内には、「ニューヨーク・タイムス」紙へ新聞意見広告を出そうとの意見もあると聞く。国内紙 を含めて、積極的なアピール行動を具体化したいものである。

 社民党全国大会を前に指摘したいことは、三党連立政権合意文書と社民党の連立 参加の持つ決定的意義である。この間の鳩山首相や岡田外相、北沢防衛相の言動は、「沖縄県民の 負担軽減の観点から、日米地位協定の改訂を提起し、米軍再編や在日米軍のあり方についても見直 しの方向で臨む」とした合意文書への違反であった。それを、合意文書の時点に引き戻したのは社 民党の存在である。『読売新聞』社説(12月13日)は「首相は小党に振り回されるな」としたが、 これなどは連立政権の合意を意図的に無視するものであろう。それにしても、今回の沖縄問題に対する 大手新聞の論調は、まるで米国と日本の官僚のプロパガンダである。ここまで堕ちたかとの思いを強くす る。鳩山政権への連立参加をめぐっては、社民党内に慎重・反対の意見も強くあった。いま問われるのは 、連立参加の意義を確認することであり、傍観者の立場に立ったり、連立離脱を望む姿勢に立つことでは ない。連立・連合政権の根本精神は「競合的共同」にある。共同による沖縄問題の解決が現局面において 求められることであり、鳩山内閣への規制力を全党一致してつくることである。


参院選勝利のために

 参院選に向けた社民党方針は、「改選議席(3名)の倍増」を目標に、「選挙区選挙は、比 例区選挙の得票増をめざし公認候補の擁立を原則」としつつ、連立与党との選挙協力を重視し、他党候 補の推薦や無所属統一候補の擁立を検討する、「各都道府県連合は、比例選挙を重視し、今回の衆議院 選挙の得票数の三割増(390万票)を目標に、三名の当選をめざす」というものである。求めたいの は、選挙区ではまず現職再選戦略であり、早期の候補者擁立・決定である。比例区選挙は、前回は263 万票であった。今回は、390票が目標であるから、総選挙で失った70万票を回復し、さらに20万票を上乗 せするということになる。参院選勝利のためには、いうまでもなく通常国会での取組みが重要である 。沖縄問題と合わせ「生活再建」にむけた社民党の取組みが国民的評価を受けることになる。労働者 派遣法の抜本改正など、この間に社民党が主張してきた課題の具体化が鋭く問われることとなろう。 それを誠実に実行していけば、比例区の獲得目標は決して不可能な数字ではない。その決意を共有し たい。今回、全国大会前日に「衆院選経験交流会」が開催されることとなった。これは新しい取組み だが、各地の実践をつき合わせ、党活動の現状を問い直すことは、参院選での前進に寄与しよう。

 参院選勝利のためには、2011年の統一自治体選との結合も求められる。青年・女性候補の積極 擁立による社民党リフレッシュに向けて自治体選候補の擁立・内定・決定も急がれねばならない。今年は 、韓国併合100年である。この年に、社民党としても、アジア平和外交の具体化と青年・女 性運動強化の視点から、村山富市元首相を団長とする青年・女性訪問団の派遣なども構想してはどうだろうか。

 以上の論議を通じて、全国常任幹事会の人事体制の確立を望みたい。