「進歩と改革」No.695号    --2009年11月号--


■主張 鳩山内閣の発足と当面の課題



 鳩山内閣が発足した。すべり出しは今のところおおむね順調である。


高い支持率、訪米、閣僚の活発なうごき

 総選挙での民主党の圧勝を受けて9月16日に発足。民主・社民・国民新の3党連立であるが、議席数を反映して、民主党主導の内閣となっている。この政権誕生の歴史的な意義、性格は別稿、山崎一三氏の「社会民主主義的的政権とわれわれの課題」が述べているので、そちらに譲り、ここでは発足の状況と当面の課題に絞って述べておきたい。

 内閣発足後の世論調査では、鳩山内閣の支持率は、朝日新聞で71%、日経新聞で75%の高率を記録し、小泉内閣発足直後の78%に次ぐ(朝日)数字となっている。ただ政策課題では、賛否が分かれ、子ども手当の支給は実現すべきだ60%、そうは思わない16%に対し、高速道路の無料化は実現すべきだ24%、そうは思わない67%となっている(朝日)。また社民、国民新との連立については、社民、国民新の意見をなるべく取り入れるべきだ61%、そうは思わない31%(朝日)に対し、日経では、鳩山内閣を支持しない16%のうち、その理由として社民党、国民新党の代表が入閣したことが29%でトップで、3党連立を評価する46%、評価しない38%となっている。

 発足直後の内閣のうごきとしては、鳩山首相、岡田外相の訪米、国連総会の出席、温室効果ガス90年比25%削減を宣言、「核なき世界」をめざす安保理決議の満場一致採決への参加などが大きく報じられ、国内では、脱官僚・政治主導の一連のうごき、マニフェストなどに示された民主党の政策の実行にむけた各閣僚のパフォーマンスなどが伝えられている。そのなかには岡田外相の核持ち込みに関する密約問題の調査命令、北沢防衛相の沖縄普天間基地の辺野古移転問題の現地視察、前原国土交通省の八ツ場ダム、川辺川ダムの建設中止と現地訪問などが大きな話題となっている。


3党合意の重要性、政策実行の基準に

 対米関係のように相手のある問題、高速道路のように反対の声がつよい問題などあるが、当面の政策実行については、民主党、社民党、国民新党の「3党連立政権合意」と「3党連立政権樹立に当たっての政策合意」が基本的な基準になるべきだと考える。

 この政策合意を読むと、小泉内閣の競争至上主義と相次ぐ自公政権の失政によって、国民生活、地域経済の疲弊、雇用不安の増大、社会保障・教育のセーフティネットのほころびに対し、税金のムダ使いの一掃、国民生活の支援を通じ、国民の可処分所得を増やし、消費の拡大につなげる、年金、医療、介護など社会保障制度や雇用制度を信頼できる持続可能な制度に代えることなどとしている。

 各論では、インフルエンザ・災害・雇用緊急対策、消費税の据え置き、郵政事業の根本的見直し、子育て、仕事と家庭の両立への支援、年金・医療・介護など社会保障制度の充実、雇用対策の強化―労働者派遣法の抜本的改正、地域の活性化、地球温暖化対策の推進、自立した外交による世界への貢献がうたわれ、最後に「憲法」として、唯一の被爆国として、日本国憲法の「平和主義」をはじめ「国民主権」「基本的人権の尊重」の三原則の順守を確認し、憲法の保障する諸権利の実現と国民生活の再建に全力を挙げるとしている。また「自立した外交」のなかでは、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」とし、東アジア共同体の構築がうたわれ、北朝鮮には「核兵器やミサイルの開発をやめさせ、拉致問題の解決に全力を挙げる」としている。

 海上自衛隊のインド洋での給油活動や非核三原則については言葉としてはふれていないが、民主党は来年度の派遣は行わないはずであり、問題はそれに代る「国際貢献」のなかみになりつつある。

 社民党の機関紙「社会新報」は政策合意について一面記事で、民主党当初案になかった憲法三原則をはじめ「速やかなる緊急雇用対策」「地球温暖化対策」も党の意見を反映して盛り込まれた、さらに福島党首の言葉として基地問題について、「自公政権とは一線を画して沖縄県民に応える道が開かれた」と伝えた。

 基地問題についてアメリカ側の対応は、「協議に応じる」としながら、自公政権との合意を楯にしようとしている。11月のオバマ大統領の訪日が当面のヤマ場とされているが、3党合意に基いて粘り強く、自立した外交態度の展開が望まれる。


緊張の持続をのりきる明確な意志統一を

 社民党は以上の3党合意をかちとった上で、福島党首を消費者・少子化対策、男女共同参画担当相として送り出し、あわせて与党間の基本政策閣僚委員会を実現した。さらに辻元清美氏を国土交通副大臣として、送り出した。辻元副大臣については、新聞報道によると、はじめ別の議員を予定し、辻元氏も国対委員長として党務に意欲をもやしていたが、連絡ミスから福島大臣が閣議決定に署名してしまい、変更できなくなったとのことである。福島党首は政策合意で、沖縄の声を反映させ「生まれた初めて疲れた」(日経)とホッとしたところを辻元氏を一本釣りされたのか。本誌は副大臣にだれが適任か口をはさむ気はないが、単なる連絡ミスというよりも、政権参加に当たって、人材の配置について、しっかりした意志統一がされていたのか、されていれば連絡ミスもなかったのではないか。ただでさえ世論調査結果にみるように、少数の社民党の主張が多すぎるのではないかとの偏見でみられがちなところへ、メディアにいらざる話題を提供してもらいたくない。連立政権に対する少数での緊張感をもった参加は、まことにご苦労なことだが、緊張につぐ緊張をのりきっていただかねばならない。さらなるがんばりを期待したい。