「進歩と改革」No.694号    --2009年10月号--


■主張 自公政権に厳しい審判を下した第45回総選挙



民主党大差の一人勝ち、歴史的評価はなお今後に

 第45回総選挙は8月30日投開票され、民主党が圧勝、政権与党の自民党、公明党は惨敗した。自民党は1955年の結党以来、初めて第一党の座から転落した。

 後世、この選挙を以って、日本政治史上の歴史的転換点と位置づけることができるかどうか、郵政民営化を掲げた小泉ワンフレーズ政治と同様に、政権交代のワンフレーズによる一過性の変化に終わるのか、それは、今後の民主党を中心とする新内閣の政治にかかっているといえよう。

 本誌の定期発行上の作業日程から、ここでは総選挙結果の詳細な分析はできない。また新内閣をめぐる政権協議の確定を待つことも出来ない。とりあえず新しい議席の確定だけを基に論評するほかない。

 最初に、新しい議席の配分状況を掲載しておこう。

     当選  小選挙区  比例区 公示前比増減
 民主党 308  221   87   増193
 自民党 119   64   55   減181
 公明党  21    0   21   減 10
 共産党   9    0    9   増減なし
 社民党   7    3    4   増減なし
 みんな   5    2    3   増  1
 国民新   3    3    0   減  1
 日本新   1    1    0   増  1
 諸派    1    0    1   増減なし
 無所属   6    6        増減なし

 議席上の選挙結果は余りにも明らかである。勝因、敗因について言えば、「自民党をぶっ壊す」と言った小泉「改革」以降の新自由主義に基づく格差拡大、医療崩壊、社会保障の切捨て、市町村合併がポーズだけでなく本物の自民党ぶち壊しになったのは皮肉であった。その上、グローバルな金融危機に見舞われ、選挙よりも景気対策だとする麻生首相の態度が財界を中心とする一部の利益擁護と生活給付金のように選挙目当ての露骨なバラマキに過ぎないことも有権者には鋭く見抜かれていたと言えよう。

 民主党の勝因については、自民党の敗因をそっくり裏返しにすればいいのだが、それがこれほどの大差の民主党の一人勝ちとなったのは小選挙区制を中心とする選挙制度が大きな要因をしめるだろう。二大政党中心のメディアの報道もあり、共産党、社民党、国民新党などの少数政党は苦戦を強いられた。少数切捨ての選挙制度が真に民主的か否かは重大な問題を孕んでいる。

 この選挙結果を以って真に歴史的と言えるかどうか、後世の判断に委ねざるをえないのは、民主党がどこまでやれるか曖昧さがあるからである。一つは政官業癒着の自民党政治を真に終焉させうるのか、マニフェストの表現を曖昧にしたことに見られるような対米姿勢を真に自立的にできるのか。自公政権が残した九百兆もの財政赤字を抱えて、ムダの排除、埋蔵金の活用、租税特別措置=業界保護の暫定税率の廃止などで、どこまで政策財源 を作り出せるかなど実行力が問われるところだ。

 ここで社民党の役割が重要になる。


  社民党の重要な役割と課題

 社民党はすでに連立政権に参加の方向を打ち出し、8月14日、民主、社民、国民新党の共通政策を発表している。8月26日付『社会新報』によれば、この共通政策は、「三党がこれまで法案共同提出などの形で共通の立場で取り組んできた課題をベースにしたもの。取りまとめに当って社民党は、民主当初案になかった憲法理念の尊重、三党案をふまえた派遣法改正内容の具体的な明記を強く求めたほか、障害者施策、生活保護、年金記録、地方分権、農家所得補償についても盛り込むよう提案、合意に反映させた」とのことである。

 政権協議の合意書は当然、最終的なものが作成されようが、これは当然その基礎となるもので、社民党が政権に参する保障となるものである。連立政権の歴史的評価は今後に委ねられると述べたが、政権の主力ではないにしても、その一部には社民党も責任を問われる立場であろう。

 社民党は今回の総選挙で、議席は現状維持にとどまり、残念ながら二ケタの目標は果たせなかった。少数党に不利な選挙制度、二大政党に偏ったメディアの報道態度などあるが、それを突破できなかったのは社民党の力不足と言わざるをえない。野党間の選挙協力によって小選挙区では前回の一議席から三議席に増大したが、それも比例区で六議席(自民党の比例区候補の不足に助けられた一議席を除くと前回の実質は五議席)から四議席に後退 した分の穴埋めにしかならなかった。比例区の後退は民主党への票の流れもあったと思われるが、この四年間に社民党自身の高齢化がさらに進み、党の行動力、組織力が落ちてはいないか、懸念される。善戦区を含め、二ケタはあと一歩だっただけにあと一歩の力不足を克服する課題はどうしても重要だ。

 今後の課題としては、その一は、来年の参議院選挙に向けて、社民党が入っていたからできたと言える成果をあげることであろう。政権の運営と巨大与党となる民主党との関係は、少数党の意地をむき出しにするのでなく、説得力のある柔軟で粘り強い、緊張感のある態度が必要とされよう。参議院選挙で民主党が単独過半数を得たならば、来夏以降は民主党の単独政権もありうるので、その期限はとりあえず一年間である。また地方自治体議員の増を含めて党勢の拡大、若返りと、都道府県レベルから末端の党組織までの機関の確立など、党組織の強化と再建が必要であろう。また労組の民主党支持への流れも今度の選挙結果でさらに強まることも考えられるので、「市民との絆」をもう一度努力し、社民党の支持基盤の再確立も必要となろう。