「進歩と改革」No.688号    --2009年4月号--


■主張 自公政権に代わる連立政権の論議を



格差拡大の自公政権からヒューマンニューディールの政権へ

 麻生内閣は、目玉政策の定額給付金が究極のバラマキ、 その上地方自治体に経費の負担を強い、そんなことをす るくらいならもっとすることがあるだろうと全くの不評 を買ってしまった。さらに麻生首相の言動のブレ、果て は小泉郵政民営化について「自分は賛成でなかった」な どと発言、それなら郵政民営化のシングルイッシュ―で 得た衆議院の三分の二議席に頼って景気対策優先と称し 総選挙を引き延ばして、予算を強行可決をしようとして いるのはどこの誰だと言われる始末で、盟友の中川財務 相は外国まで行って醜態を晒すし、内閣支持率は下げ止 まらず、福島社民党首の言を借りれば「もはや政権の体 をなしていない」状態である。

 もちろん、この間の自公政権は、市場原理優先の政策 の誤りから、貧富の格差の拡大、派遣切りを始めとする 雇用の崩壊、地方と医療の崩壊、危機的な状態の続く農 業と年金・福祉に対する無策、市民生活の安心・安定を 破壊した元凶である。

 代わるべき政権の政策方向は、現在の野党の間でまだ 公式の協議が始まっていないが、またこの稿を起してい る段階では個別の政党のマニフェストも近く発表とは伝 えられているもののまだ発表されていない。しかし、自 公政権の政策的失敗や、これを追及してきた社民党や野 党共闘の対置してきたものから推測すると、かなり明確 な像がうかびあがってくる。その有力な手がかりは本誌 前号に掲載された近藤正道・社民党緊急雇用医療対策本 部事務局長の談話「派遣切りの危機を逆転し、ヒューマ ンニューディールへ」である。

 そのなかで、近藤議員は「命とみどりの公共投資、農 林業、医療、介護、子育て支援、教育、人が人を支える 福祉」と、「地球温暖化の防止、再生可能な自然エネルギ ー(太陽光、風力、バイオマス)」への転換をあげている。 経済は実体の裏づけのないローンにローンを組み合わせ て、貸し付け、浮利を追う金融バブルと一部大企業を中 心とする外需依存から内需中心へ、そして「ヒューマン」 と言っている意味はカネに発してカネに還る社会から人 間から発し人間に還る社会への転換であろう。


野党連立の動きに立ち遅れるな

 いずれにしても、来るべき政権の中心的課題は金融バ ブルの破綻で危機に直面した市民生活の回復になるはず だ。小沢民主党代表も「国民生活が第一」と言ってきた し、1月18日の民主党大会では、「農林漁業活性化やあ らゆる建物への太陽光パネル設置を支援する『環境のニ ューディールと、小中学校の耐震強化や介護職員待遇改 善など『安心・安全のニューディール』を公約の柱に加 える方針を示した。来年度活動方針は社民、国民新両党 などとの連立を想定する」(1月19日付日本経済新聞)と 伝えられている。

 また小沢民主党代表と亀井静香国民新党代表代行は2 月20日、会談し、社民党を含む三党でマニフェストを まとめるべきだとの認識で一致したとのことである。(2 月21付日本経済新聞)  総選挙が近づくにつれ、各党の政権構想が具体化され、 華々しく打ち上げられるだろう。社民党からは、まだ公 式には連立政権構想は聞かれていない。今回の総選挙は、 社民党の消長をかけた決定的に重要な総選挙である。立 ち遅れて、「社民党は何をしている」と言われないように してもらいたい。


社民党と連立政権

 社民党の基本文献とされる「社民党宣言」の第四章4 には次のように書かれている。

 「私たちは、国会・自治体議会における党の議席増を党 の活動の柱に据え、社会民主主義の政権を日本二樹立す ることを目指します。この過程において、新自由主義・ 新保守主義の政治の転換を求める政治勢力と連携し、主 体性を維持しながら具体的な政策課題の実現を目指す、 緊張感ある連立政権の形成を展望します」

 問題はこの具体化だ。

 社民党の国会議員団はよくがんばっていると思う。そ れは、緊急雇用対策でも発揮され、野党共闘にも反映さ れた。だが、商業メディアにはそのがんばりは無視され ている。有権者の多くは社民党のがんばりを知らず、選 挙の選択肢からはずしている。各種の世論調査がそのこ とを物語っている。このようなときに、どのようにして、 社民党の存在感を示していくか。「自民か民主か」「自民 党中心の政権か、民主党中心の政権か」という報道姿勢 を「自公連立政権か民主・社民・国民新の連立か」と書 かせることも一つの方法だろう。そして連立に社民党が 入ることは、辻元清美議員が野党共闘についてよく言っ ているように、連立についても「品質保証」でもあるの だ。また総選挙後に予測として伝えられる保守大連立や 政界再編に対しても、一つの牽制の布石ともなろう。こ れは重要なことだ。

 その前に政策が一致するかどうかと 気にする向きもあろう。それは正式に協議すればよいこ とである。当面の重要課題で一致しなければ、そのこと を宣伝すればよい。社民党の立場としては、当面の政権 で、憲法改正に手をつけないことも保障がほしいだろう。 協議の成立を誠実に追求した結果であれば、不一致の場 合、説得力も出てこよう。しかし、緊急雇用対策での野 党共闘の経験からすれば、協議成立の可能性は十分にあ ると思う。社民党にはしっかり議論してもらいたい。