「進歩と改革」No.673号    --2008年1月号--


■主張  2008年を政治転換の年に



 2007年は参議院選挙で与野党の逆転が実現した後、福田・小沢会談で、大連立の動きが表面化した。これは2008年を展望する上で、欠かせない問題であるが、今号の新年インタビューで福島党首、さらに山崎一三氏「08年 いかなる本質が現象し、どう闘うか」がくわしく論じているので、ここでは重複を避け、既定の事実として、その後あるいはそれ以外について中心に論じたい。


平和国家の方向と東アジア共同体現実化の方向

 2008年の日本は政治的方向の転換を課題として動くことになろう。その第1は、大連立構想が一端破綻した11月末の段階で、国政の場で問題になっている給油新法について、参院で否決されたら、衆院で再議決して成立させるか、それに対して野党が参院で福田首相の問責決議案を可決、与党が衆議院の解散、総選挙で対抗するのか否かが議論を呼んでいる。一方、最大野党の民主党は給油新法を否定する安全保障・国際貢献の代案として、自衛隊の海外派遣恒久法案の整備を打ち出している。

 日米同盟と国際社会の信用を故意に同一化する自民党の旧態依然の発送に対し、国際的にはブッシュはすでに米国内でさえ支持を失い、気兼ねする必要はないとする小沢民主党代表の意見は、その限りでは政党だが、その小沢氏も国際貢献を自衛隊の武力に頼るという旧思考から抜け出ていない。福島社民党首が指摘するように、ある意味でこの方がもっと危険でさえある。国際情勢が変わろうとしている今こそ平和国家日本の国債貢献のあり方を鮮明にしての転換が問われているといえよう。その 構想が非現実的と非難されないためには、東アジア共同体構想にもう一度光を当てる必要があるだろう。その現実化なしには、帝国アメリカへの従属から脱却することは困難といえるだろう。

 また、アメリカが朝鮮の核無力化の進展に応じて、テロ支援国家指定の解除を行おうとしてい るのに対して、日本政府は拉致問題の解決なしに行うことに反対してきたが、アメリカの指定 解除は〇七年中にも行われると報じられており、日本政府は対朝鮮圧力外交からの転換を迫られている。朝鮮の拉致問題を排外的な朝鮮嫌悪・圧力の方向に政治利用しようとした右翼的なやり方が東アジアの緊張緩和に敵対して外交的孤立を招いたのである。ここからの転換はもはや必至の情勢だが、この転換をごまかしながらいやいややる、そして右翼的思考を温存させながら行うのか、はっきりと日本をアジアの一員として近隣友好の外交に転換するのかも重要な課題となろう。


リハビリ難民、お産難民続出をよそに企業減税だけをまかり通らせてよいか

 そして内政の課題としては、小泉・安部内閣の「改革」路線によって、拡大さ れた格差、国民生活の貧困化、退廃と不安の増大にどうハドメをかけるかである。 直近の問題としては、消費税の増税が大きな問題となっている。与党側は大連立の話し合 いのなかで消費税の税率アップの合意も狙っていたフシがあるが、その前には「うそを言っ ても仕方ない。どこかで国民に(増税を)お願いしないと」と言っていた福田首相が、連立 が消えた後は発言をあいまいにし、伊吹自民党幹事長は来年度の消費税アップを否定するに至 った。総選挙にむけて不利な要因を隠す意図と思われる。後期高齢者医療をめぐる70歳以上 の負担増についても総裁選では凍結をうたったが、その後凍結のなかみは総選挙前の一時的なも のに過ぎないことが明らかになった。(75 才以上の保健料徴収は08年4〜9月凍結、10月〜 09年3月まで9割減額で、70〜74歳窓口負担2割は08年4月から1年間凍結) 総選挙前 の国民の目をごまかす姑息なやりかたである。

 この間すでに見たように、高齢者の住民税、所得税からの年金控除の廃止など実質増税が 進み、医療では診療報酬の引き下げで「リハビリ難民」が発生、産科医、小児科医の不足も深刻化、 社会保障の切捨て、貧困化が進行している。11月20日付商業紙は政府税調答申を「個人増税地なら し」(朝日)として、消費税の引き上げ、配偶者控除の縮小、給与所得控除の見直し、特定扶養控除 の縮小、公的年金控除の見直しなどを報じ、減税としては法人税率の引き下げを紹介、消費税値上げ の時期については「選挙の谷間 09年度に照準」(日経)とした。問題はこの報道のように企業、 特に大企業だけが当然のように減税の恩恵にあずかり、個人(一般市民)には増税と社会保障のカット が押し付けられようとしていることである。政府税調答申(日経の要約)によれば、「経済のグローバ ル化に伴い、企業の税負担面でのイコールフッティング(条件の公平化)を図るべきだとの視点から法人 実行税率の引き下げが求められている」とし、「課税ベースや社会保険料負担も考慮した企業負担の試算 は国際的に必ずしも高い水準ではないとの結果を得た」と認識しているにも関わらず「調査会では引き下 げは必要との意見が多かった」としている。これだけ国民に負担増と社会保障の引き下げを強要しながら、 企業、大企業だけが国際競争を理由に平然と減税、負担減を享受しようとしている。雇用構造は正社員を減 らし、人件費が安く、無権利のパート、派遣ばかりを増やし、労使の分配率は下げ続け、社会保険の雇用者 負担増は拒否し続け、市場では大型店ばかり増やして商店街はシャッター街化させ、防衛省を始め疑惑の売 り込みを行い、商品の偽装表示など企業モラルに反する事例は枚挙にいとまない。それでも商業メディアは 表面化した個々の事例だけを個別に書き立てるだけで、全体を問おうとしない。公共のための社会的負担を 大企業に求めようとしない。これは余りにもバランスを失し、社会的公正に欠ける。これでも小泉・安倍 の「改革」の継続を説くのか。

 EU諸国は高い付加価値税、間接税を基軸にして社会福祉を維持しているが、 企業にも日本とは比較にならない社会的負担を求めている。雇用についても労働者の権利を認め、法定労働時間も短い。付加価値税にしても日本の消費税に相当するとされているが、日本の消費税はインボイス式を採用していないため消費市場に出る以前の企業間取引を捕捉しきれない。日本では野党の政策要求に対して財源の裏づけのないものは無責任だとして、消費税の引き上げもやむをえないとの世論形成が行われようとしている。しかし、企業の社会的負担にメスを入れない限り、格差、不公平は拡大する一方であろう。グローバルな競争に太刀打ちするというが、EUの企業は労働者の権利を認め、短い労働時間の下で、社会的負担も行いながら、日本やアメリカの企業と競争している。競争の公平な条件を壊しているのは日本の方であろう。(フランスやドイツで、企業や保守政党が労働時間の規制緩和を求めているのは日米の競争圧力の所為もありだろう。)日本では労使の関係、メーカーと消費者の関係、個人と法人をめぐる社会的負担の関係が、あまりにも企業、メーカー側に有利に傾いて、やりたい放題になっている。この転換は簡単ではないが、社会の二極化が極端化しているいま、08 年にはせめてその端緒だけでもつかまなければならない。


衆院でも与野党逆転と社民党の議席増を同時達成しよう

 それらの転換を図るには政治勢力の配置を変える必要がある。07年は参議院で与野党の逆転が実現した。11月末にはオーストラリアで労働党が勝利し、政権交代が実現した。安倍首相が価値観を共有すると頼りにしたハワード保守政権が倒れたのである。08年はアメリカでもブッシュ政権が後継者もろとも政権を負われる可能性が大である。日本でも総選挙の試金石と言われた大阪市長選で自公推薦の現職が民主、国民新推薦、社民支持の新人にやぶれた。08年を小泉式のまやかしの「改革」ではなく、ほんものの政治の転換の年としなければならない。そのためには、福島社民党首の言われるように、与野党の逆転と社民党の伸長を同時に達成しなければならない。