「進歩と改革」No.672号
--2007年12月号--
■主張
社民党全国幹事長会議から―少数派が勝てる戦術を考えたい
10月13日、社民党の全国幹事長会議が行われた。社民党の機関紙『社会新報』の紙面により、その模様を検証してみたい。
全国幹事長会議の主要な議題は、「第21回参議院選挙の総括」と「第45回衆議院選挙方針」であった。これは現在の政治状況からして当然である。
冒頭、福島党首は挨拶のなかで、「参院選は党にとって本当に厳しい結果だった」が、「与野党逆転下の参議院で民主党は過半数に届かず、社民党が賛成しなければ過半数を取れない状況を生かし、良い法律は作るが悪い法律は作らせない」と決意を表明。民主党については、「所得の再配分は言うが、公共サービスを削り民営化という方向性は与党と変わらない」「格差を是正する政策を一貫して体系的にきちんと取ることができるのは間違いなく社民党だ」とし、小沢一郎民主党代表が誌上で国連決議に基づくISAF(アフガニスタンの国際治安支援部隊)に自衛隊を参加させると書いていることに対し、武力行使で問題は解決できない、日本が非軍事的手段でアフガニスタンでやれることはたくさんある。非軍事の民政支援こそ重視すべきだと述べた。そして来る衆院選で「日本国憲法9条が生き延びなければいけないように、社民党も生き延びて、人々の幸せのために輝かなければならない」と社民党の存亡を賭けた闘いになるという危機感をにじませた。
来る衆議院総選挙が社民党の存亡を賭けた闘いになるであろうことは同意できる。日本の政治における社民党の必要性についてもその通りであろう。民主党の格差是正策が一貫性と系統性があるかという問題も頷けるし、小沢代表の国連決議に基づく自衛隊派遣もその通りであろう。だから全力をあげなければ、というのもそうであるに違いない。だが、近年の大きな選挙はすべて党の存亡を賭けて全力で闘ってきたのではなかったろうか。その結果、ジリジリと後退を強いられてきたとすれば、ここで何か一工夫必要ではないだろうか。
党の組織力が高齢化とともに弱まり、国会議員も減って、財政も厳しくなっている。組織や財政が急に好転するとは思えない。ないものねだりをしてもしょうがないので、何ができるか考える必要がある。体力が変わらないとすれば、頭脳、ソフトを工夫しなければならないだろう。戦略・戦術である。少数派が勝つにはどのような戦術が必要か。本誌でもこれが絶対というものがあるわけではないが、お互いに考えてみなければならない。
多くの有権者は政治理念で投票行為の判断をするわけではない
憲法を守る、活かす、社会民主主義こそ格差是正の本家本元であると自らのアイデンティティーに自信と確信をもつのはいいが、 それは政党の必要条件であっても、選挙に勝っていく十分条件ではない。多くの有権者は苦しくなる生活のなかで、即効薬を求めている。渕上選対委員長も先の参院選で、社民党の言っていることはわかるが今回は実現可能性で判断した、と支持者からも言われたと述べている(本誌11月号)。投票者の多くは政治理念がいいかどうかで判断するわけではない。社会民主主義という印籠を示して「これが見えぬか」と言ってもはじまらない。
次期政権のあり方は考えなくてもよいのか
選挙戦でも、多くの闘いでも、自らの存在理由に確信を持った上で、当面する闘いについて、大義と獲得目標とそれを実現する戦略戦術が明確でなければならない。社民党の場合、存在理由ははっきりしている。大義は国民を苦しめ、格差を拡大した小泉・安倍「改革」に終止符を打ち、平和の問題を含めて、国民生活を安心・安定の方向へ切り替えることであろう。この点もはっきりしているだろう。獲得目標も明確である。いきなり社民党政権を望んでいるわけではない。2ケタの議席である。2ケタも高い2ケタではない。最低の10以上であろう。
問題はそれを実現する手段である。手段には政策と選挙を闘う陣形の問題があるだろう。政策については別に議論する機会があるだろう。陣形については、全国幹事長会議では、「党の顔」が立候補すべきだという複数の意見が出ていた。それと選挙協力について議論があった。「党の顔」とは参議院議員である福島党首のことであろうが、いまの段階で本誌が意見をさしはさむのは控えておきたい。選挙協力については、民主党に裏切られた大分の意見と富山、愛媛などで共同候補が当選直後に民主会派入りしてしまった問題、決定について中央と地方の関係などの意見が出ていた。選挙協力そのものについて突っ込んだ論議があったとは感じられない。ということは、本部提案の@他党の公認候補の推薦は原則として行わない、A選挙の協力は対等平等が原則であり、一方的協力は行わないという、ある意味で限定的な選挙協力方針を進めるということになる。限定的であれ、選挙協力を進めるとなると、政権選択選挙となる衆議院選挙で、目標とする政権のあり方(民主党が多数になった場合、連立が閣外協力が、政権に距離をおくのか)まで論議が必要になると思われるが、その点は本部提案にもなかった。しかし、いずれはこの点も論議が必要になるだろう。仮に現在の野党が勝利して、いざ政権となった場合、片山内閣や村山内閣のように何の準備も事前の議論もなかったではすまされないであろう。
先の参院選で、民主党は「国民の生活が第1」と政策にかなり社会民主主義的色彩を取り入れた。政策的には接近した面もあるが、福島党首が指摘するようそれがどこまで本物か検証の必要がある。国際貢献のあり方では、なお距離がある。今後、選挙協力を詰める過程で、政権のあり方まで議論を深めることができるか否か。これは選挙戦術にも大きく影響する。総選挙になれば、大手メディアは政策選択選挙として、自民・公明連合か、民主・国民新か(そこに一枚社民を入れて民主・社民・国民新か)と書きたてることになろう。それによって社民党は民主党との一致点を評価していくか、差異性を強調するか分かれてくることになる。そこには大分での問題など、お互いの信頼感も問題もあるだろう。
天の利、地の利を味方につける重要性
これらの問題を通じて、少数政党である社民党が天の利、地の利を味方につけて、存亡の危機に臨む陣取りの形が決まってくるのではないか。古来、戦闘にあたっては陣取りや陣形の戦局を決定する重要な要因であった。現代の政治と歴史上の戦闘を一緒にするわけにはいかないのはもちろんだが、例えとしてはヒントになることもあるだろう。
少数が多数に勝った典型例として、織田信長の桶狭間の合戦がある。わずか数千で、今川義元の数万の大軍を相手に、悪天候の所在をくらまし、地勢をも利用して、縦長の隊列となった相手の本陣を横から奇襲して大将の首を取って一気に決着をつけた。秀吉と明智光秀の山崎の合戦では、天王山をどちらが先に取るか、地物地形をめぐる戦いでもあった。陣形の勝利としては日本海海戦の日本艦隊のT字戦法が言われている。T字型で相手の頭を抑えて一隻ずつ集中砲火を浴びせるために危険な敵前回頭をあえてした。有利な陣取り、陣形は戦闘行為そのもの以上に戦局を左右した。
連立連合の信頼感の問題としては、中国共産党の国共合作がある。蒋介石の国民党軍の北伐の過程で、1927年の上海をはじめ各地で共産党員、労働者活動家を大量に殺害された中国共産党が日本帝国主義と戦うために1934年あえて第2次国共合作に踏み切った。このことが第2次世界大戦後、中国共産党が蒋介石軍を大陸から駆逐する遠因になったと見られる。戦略戦術の重要性である。
現代政治における天の利とは、やはり民意の動きであろう。今日、二大政党への流れは確かに強く動いている。だが二大政党と見られる自民党と民主党が絶対の信頼をえているわけでもない。インド洋の給油活動の継続について世論調査の結果は否定的な見方が多数になっている。また民主党に対しても、小泉・安陪政治の作り出した格差拡大ニハドメをかけようとして参院選では民主党に投票したが、必ずしも民主党政権の実現を望む声が多数でもない。このように二大政党化の流れには隙間がある。利の利、人の利を得てその隙間をどう突くのか。
地の利に相当するのは、すでに述べた政党間の共闘、連携ということろろであろうか。
正しい政治理念と全力で闘う決意の間をつなぐ戦略・戦術の重要性についてさらに明確化を望む次第である。