【編集後記】
●今月号の巻頭論文は、鎌倉孝夫先生の「経済診断・脱原発の実現をめざして」です。この中で、原発被曝労働者のこととともに、原発を原子力の平和利用としてきた学者・研究者の問題と本来あるべき姿とが分析されています。特に注目したいのは、「自主・民主・公開」という平和利用3原則に関連して、平和的「研究」が「利用」へと転じた理由と根拠への論及です。80年代であったでしょうか、原水禁日本国民会議の場で、この3原則をどう考えるべきかとの真剣な論議があったことを思い出しました。鎌倉先生には、今後も原発をめぐる政治経済学的分析を通し、脱原発の道を提起いただけるとのことです。ご期待下さい。
●武本和幸さんから、5月号に続いてご寄稿をいただきました。東京の地下鉄駅には、「ただいまの電力使用は75%」といった液晶パネルの案内板が設置され始めています。武本さんは、「停電恫喝」との言葉で、停電を心配する世論を煽り原発を維持しようとする東電・電力会社を批判。資料を使って「多少の我慢が必要かもしれないが、原発を止めても、社会が混乱することはない」とキッパリ主張されています。
●5月3日の平和フォーラム主催の憲法集会は、東日本大震災・福島原発事故をうけて、大テーマが生存権保障に設定され、意義深い集いになりました。その詳細な報告を八木隆次さんからいただきました。本誌におなじみの久原和広さんからは、自らが立候補し当選した大分県議選の報告。冷静な総括から「残光を射光へ」という氏の決意を読み取っていただきたいと思います。同志社大学の浅野健一先生とともに朝鮮を訪問された矢内真理子さんのレポートは、みずみずしい感性で朝鮮の現状と日朝関係改善への強い想いが表現されていると思います。全日農の谷本巍名誉会長(元参議院議員)の「戦後農民運動史を語る」は、先生の叙勲を機に記録され、パンフとして発刊されたものですが、日頃なかなか接することのできない農民運動の貴重な話で、本誌に再録させていただきました。
●「ゲゲッ」と思う?刺激的な論文が届きました。鎌田明彦さんの「社民党は大増税を主張しよう!」。確かにタイトルだけを見ると「ゲゲゲッ」と思う読者もおられると思いますが、読んでみると、内容は多面的に展開されており、消費税問題も、ただ「大増税!」だけが主張されているわけではありません。本誌としては、5月号の山崎一三「社会保障・財政危機・消費税をどう考えるか」を基本認識としていますが、様々な意見を紹介するのは大事なことだと思っています。(山内正紀)
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