「進歩と改革」No.685号   --2009年1月号--

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■主張 田母神論文が突きつけたもの>

「変革」へと動く世界情勢と我々の戦略的課題         山崎 一三

◆マンガ 「濡れ衣国家」の、言論クーデター男        森本 清彦

嵐の中への船出―オバマ新政権のジレンマ          柴山健太郎

米国の中東政策―その歴史とオバマ政権           河辺 一郎

◆マンガ Can you chage sure?       森本 清彦

メディアと日本警察の「共謀共同」冤罪            山口 正紀
―三浦和義さんを殺した「ロス疑惑」報道

「生きにくさ」が広がり深まる日本社会            柏井 宏之
―コミュニティ再生へ「連帯」経済の法制化を

障害者権利条約と私たちの暮し               青木 学

■鎌倉孝夫の経済診断
金融危機の経済学

編集50年(5)-私の三池闘争記(1)             松本 弘也

◆スポーツ時評 本当の日本シリーズが帰ってきた      中森 稔博

【編集後記】

今月はブッシュ政権にブッバイを告げ、オバマを当選させた米国民の選択について3本の論考。
 トップは山崎一三氏。問題を世界的な変革の過程の始まりととらえ、かつて変革の目標とされた国家社会主義に代わる「共同の思想」と「地域共同体」を重視し、日本の具体的課題として、麻生太郎の「自由と繁栄の弧」構想のギマン性を暴きつつ、「左側の対抗軸」の形成を追及しています。

2本目は柴山健太郎氏の「嵐の中への船出―オバマ新政権のジレンマ」。前段で多難な条件にふれ、入手しえた選挙結果のデータ分析を行います。オバマ氏がなぜ勝ったのか、出口調査などの数字が明瞭に方ってくれます。
 3本目は、河辺一郎氏の「米国の中東政策―その歴史とオバマ政権」。イラクからの撤退、アフガンには米軍増派というオバマ氏の方針は可能か、なぜ撤退と増強なのか、注目と関心の的ですが、川辺氏は日本の好戦か反戦か、単純に期待することを避け、アメリカの外交政策がいかに形成されてきたか、歴史的にあとづけ、オバマ氏の政策を位置づけています。そして答を急ぐ前に、イラク戦争を支持してきた日本外交を選挙で国民が問うてきたのかどうか問います。

アメリカでオバマ氏の当選が伝えられるころ、日本では田母神空爆長の更迭が起きました。「主張」でこの問題をとりあげました。問題は田母神氏では終わらないのではないか、自衛隊幹部の教育と政治責任の追及を試みました。
 森本清彦さんのマンガも、オバマ当選と田母神問題で、今月は2点です。

この二つの問題にくらべると、やや旧聞に属するかと思いますが、「ロス疑惑」の三浦さんの「自殺」が伝えられました。編集子も長い間三浦さんには「灰色」の印象を持っていたのですが、よく考えてみると、それは週刊誌の「疑惑」報道にのせられていたようです。浅野健一先生の裁判支援を通じて、近づきになれた山口正紀氏にお願いすることができました。氏は最初に三浦さんと会ったときから無実を確信し、そのため読売新聞から追放されたのですが、人権侵害報道と闘って悔いはないと。メディアの人権侵害を告発、三浦さんは他殺の疑いが濃いことも。

柏井宏之氏の「『生きにくさ』が広がり深まる日本社会」は米国発の金融・経済危機が市民社会を直撃するなか「生活を守る」から「生活を創る」へ、地域共生の発想を強調。冒頭の山崎氏の論文でも、世界変革の柱の2番目に柏井氏の名をあげて、営利企業とは異る共生型の経済セクターの必要性を説いています。
 青木学氏の「障害者権利条約と私たちの暮らし」は広がり深まる生きにくさの矛盾の集中点ともいうべき障害者が打開すべくいま直面している法制的課題です。「鎌倉孝夫の経済診断」今号は理論編です。世界に広がる金融危機について、間違っている見解、問題のある見解をあげ、理論的な基礎を提供しています。
 頁数の調整がつかず、河辺さんの文章の末尾を他の頁に入れたり、編集子の文章を途中で切って次号にまわすなど不細工なことをしました。すみません。(松本)